{"product_id":"9784863850279","title":"片方の手袋","description":"ぼくが見たもの\u003cbr\u003e\u003cbr\u003eあじさいの花のおくに\u003cbr\u003eぼくは見る\u003cbr\u003e空に落としていった彼の片方の手袋を\u003cbr\u003eむらさきいろの未明\u003cbr\u003eぼくの背中をとおりぬけて\u003cbr\u003eぼくらの約束の場所へ\u003cbr\u003eいち早くかけつけた彼\u003cbr\u003eすぎ去った時は\u003cbr\u003e川面に流すはなびらほどに\u003cbr\u003eはかなくはない\u003cbr\u003e手首にしみる手錠の冷たさを\u003cbr\u003e忘れることのできない人のために\u003cbr\u003eひとしずくの友情のかげりの中で\u003cbr\u003eぼくが見たもの\u003cbr\u003e彼が見たもの\u003cbr\u003e\u003cbr\u003eそれが今朝のあじさいの色だ\u003cbr\u003e一足とびに時間をこえて\u003cbr\u003e炎の闇に飛びこんだ日々\u003cbr\u003eぼくらの青春の喉仏が神々の硬い扉を\u003cbr\u003e噛みくだくために\u003cbr\u003e直立不動の姿勢からおともなく\u003cbr\u003e大地に倒れこんでいった時\u003cbr\u003eぼくが受けとめたのは\u003cbr\u003eまだ暖かみのあるひとつの手袋だけだった\u003cbr\u003e彼は未明のやさしい心を\u003cbr\u003e手袋の中にのこしたに違いない\u003cbr\u003e香りこそたきこんではいなかったが\u003cbr\u003eそれは柔らかいけもののぬくみのように\u003cbr\u003e冷たい空の中へゆっくり落ちつづけていった\u003cbr\u003eそしてぼくは生きた","brand":"書肆侃侃房","offers":[{"title":"Default Title","offer_id":48543150932272,"sku":"","price":2200.0,"currency_code":"JPY","in_stock":true}],"url":"https:\/\/www.maruzenjunkudo.co.jp\/products\/9784863850279","provider":"丸善ジュンク堂書店ネットストア","version":"1.0","type":"link"}