{"product_id":"9784863850804","title":"旅するペンギン","description":"ペンギン\u003cbr\u003e\u003cbr\u003e大通りのスクランブル交差点を\u003cbr\u003e斜めに渡っていると\u003cbr\u003e真ん中にペンギンが立っていた\u003cbr\u003eその手にアイスキャンディを持って\u003cbr\u003e右に避けると右に行き\u003cbr\u003e左に避けると左に行くので\u003cbr\u003eどうにも進めなくなっているうちに\u003cbr\u003e青信号はちかちか点滅し始めた\u003cbr\u003e\u003cbr\u003eペンギンはしきりに恐縮して\u003cbr\u003e汗をかきながらぺこぺこ頭を下げるが\u003cbr\u003e灼熱のアスファルトの上で\u003cbr\u003eアイスはだらだら無残に垂れていく\u003cbr\u003e結局ぼくとペンギンは\u003cbr\u003e交差点の真ん中に取り残されたのだった\u003cbr\u003e\u003cbr\u003eクラクションとともに\u003cbr\u003e車列がぼくたちを挟んでいく\u003cbr\u003eぼくとペンギンは倒し損ねた\u003cbr\u003e２つのボーリングのピンのように\u003cbr\u003e並んで立っている\u003cbr\u003e\u003cbr\u003e車列のスピードが景色を漂白していく\u003cbr\u003e思い出したがぼくには\u003cbr\u003e交差点の向こうに女が待っているはずだった\u003cbr\u003eしかし向こう岸は少しずつ遠ざかり\u003cbr\u003e女は手を振るが顔は霞んでわからない\u003cbr\u003e気がつくと\u003cbr\u003e女の顔さえも思い出せなくなっていた\u003cbr\u003e対岸は夕闇に暮れていった\u003cbr\u003e\u003cbr\u003eいつしかぼくたちは\u003cbr\u003e激しい急流の中に立っていた\u003cbr\u003eふわふわ深い靄が立ちこめていた\u003cbr\u003e左から首長竜が流れてきた\u003cbr\u003e右からは装甲車\u003cbr\u003e前から捻れた五線譜と噛みつきそうなビーナス像\u003cbr\u003e後ろからは額から血を流した柱時計が\u003cbr\u003eぼくたちの耳朶をかすめていった\u003cbr\u003e\u003cbr\u003e遠くを見つめながらペンギンは言った\u003cbr\u003e\u003cbr\u003e　あなたは一度も待ち合わせなどしていないのですよ。たった一つの約束を除いては…。\u003cbr\u003e\u003cbr\u003e太陽が卵黄色に熟した夕べに\u003cbr\u003eぼくとペンギンは対のように\u003cbr\u003e葦高い中洲に佇んでいたのだった\u003cbr\u003e周囲は遥か南氷洋の懐かしい風景に変わった\u003cbr\u003e　\u003cbr\u003e　あなたが歩いたどんな道も帰り道だったのです。鮫のような心に脅かされても\u003cbr\u003e　あなたは小石のように傷つくことはないでしょう。\u003cbr\u003e\u003cbr\u003e狭い中洲を挟んで様々なものが流れてくる\u003cbr\u003e廃屋\u003cbr\u003e駄菓子屋の玩具\u003cbr\u003e壊れたコスモス\u003cbr\u003e\u003cbr\u003eところでペンギンは何処から来て何処へ行くのか？\u003cbr\u003eガムの看板から抜け出てきたような顔で怪しいのだ","brand":"書肆侃侃房","offers":[{"title":"Default Title","offer_id":48543153455408,"sku":"","price":2200.0,"currency_code":"JPY","in_stock":true}],"url":"https:\/\/www.maruzenjunkudo.co.jp\/products\/9784863850804","provider":"丸善ジュンク堂書店ネットストア","version":"1.0","type":"link"}