
2025-12-24
文豪と文房具の新たな出会い!
「文豪メモリー」誕生秘話
梶井基次郎、谷崎潤一郎、太宰治…日本を代表する文豪たちのイメージをモチーフにした文房具「文豪メモリー」シリーズをご存知ですか? 2025年4月に発売以来、密かな人気を呼んでいるこのシリーズがどのようにして生まれたのか、企画担当者に話を聞きました。
プロフィール

安村さん
古川紙工企画デザイン部/デザイン担当。
太宰治『走れメロス』が好き。

山口さん
古川紙工EC販促課/販促・広報担当。
梶井基次郎『檸檬』が好き。
山本
丸善ジュンク堂書店 営業本部文具営業部/商品開発担当。
太宰治『トカトントン』が好き。
上原
丸善ジュンク堂書店 営業本部文具営業部/商品開発担当。
太宰治『女生徒』が好き。
人気のレトロ文具「檸檬書店」シリーズの新作のテーマを「文豪」に
この企画は、古川紙工さんとともに2020年にスタートした文具シリーズ「檸檬書店」のひとつなんです。毎年2、3企画新作を発表していて、いずれもお陰様で人気商品になっています。
当社の「レトロデパート」シリーズのテイストが、丸善ジュンク堂書店さんの世界観と合うんじゃないかということでスタートしたんですよね。
これまでモチーフとして本棚や万年筆など、丸善やジュンク堂書店にゆかりのあるアイテムをデザインしてもらってきました。ハヤシライスもあるんです。丸善の創業者「早矢仕有的」の名前が「ハヤシライス」の語源という説があって。
このシリーズが2022年の秋から「BOOK CAFÉ LEMON」という想像上のカフェという設定で、少し可愛い動物のキャラクターを立てたんですよね。これもとても人気ですが、今回は一度、初期のテイストに戻そうということで、書店にゆかりのある存在として「文豪」を取り上げました。
世の中文豪ブームに加えて、推し活ブームも続いてます。でも文豪ファンの人は推し活をしたくてもできないですよね。そのもどかしさに応えるシリーズになれるんじゃないかと思いました。
丸善といえばまず「梶井基次郎」。そして残る3人の選出は?
−−文豪の人選やテイストはどのように決めたのですか?
古川紙工の商品は主に若い女性向けの可愛らしい雰囲気のものが多いのですが、丸善ジュンク堂書店のファンにはもう少し年齢の上の方や男性も多いので、そういった方にも興味をもっていただけるように心がけました。また「推し活」のイメージで、各文豪にわかりやすいテーマカラーを設定しました。ある程度落ち着いた色合いは意識しつつ。
幅広い年齢の方に届くよう、バランスを取っていただきました。文豪の人選としては、まずは梶井基次郎。言うまでもなく、丸善と非常にゆかりのある作家ですからね。代表作『檸檬』の舞台になり、この「檸檬書店」もそこから来ていますから。
他の3人は、「文豪人気ランキング」の上位からセレクトしました。
文豪シリーズは今後も続けていきたいので、第一弾で失敗はできない。人気作家から選ぶのは賢明だと思いました。実際今回の4人はみな人気があります。一方で、第二弾以降も魅力的な人が続かなくてはいけませんから、隠し玉も残してあります(笑)。

最初は文豪の「似顔絵」をモチーフにしようとしたけれど…
−−それぞれの文豪に合わせたモチーフや、アイテム選びは?
それぞれの文豪のことをよく知らない人でもなんとなく連想できるよう、代表作に絡めたモチーフを中心に、ファンにとって“わかる人にはわかる”というようなちょっとマニアックな要素も織り交ぜています。代表作の中に登場する印象的なアイテム、特に作家自身が個人的にも好んだアイテムをピックアップしました。中には特別なエピソードに由来するアイテムなど、その作家のファンだけが思わずニヤリとするようなものもあります。
さすが古川紙工さんらしく、いずれも文豪でも可愛く仕上げてくれました。実は最初は文豪の似顔絵をモチーフのメインにする案をいただいていたのですが、可愛い雰囲気のほうが手に取ってもらいやすいと思ったので、顔ではなく作品のモチーフや人柄にフォーカスしたモチーフに落ち着きましたね。
アイテムについては、文豪ということで、これまでのシリーズの、付箋やクリアファイル、シールなどに加えて、しおりやブックカバーなど、本にまつわるものを追加しました。
マルチクロスも追加しましたね。読書とメガネも親和性が高いので、メガネ拭きとして使えるものを。

「文豪好き」の推し活を応援! という隠れテーマが功を奏した!?
−−発売から1年弱、お客様からの反響は?
お陰様で好評です。おもしろいのは、4人の文豪の売れ行きにあまり差がないこと。やはり丸善ジュンク堂書店ゆかりの作家ということもあって、梶井基次郎が若干抜きん出ているものの、他の3人は僅差です。
いずれにしても「本好き」の人が関心を示してくださっています。
先日文学フリマに出店したのですが、ここでは文豪で選んで買っていく人が目立ちました。また店頭でもお客様から「次はこの文豪のものを作ってほしい」というアイデアが上がってきているんです。それもリクエストされるのは有名な方というより通好みな文豪。まさに「みんなにその文豪の魅力を知ってほしい」という、推し活のような気持ちなのでしょう。
店舗間の傾向を見ても、このシリーズに限っては本の売上が強い店舗でよく売れていますし、アイテムもブックマーカーやブックカバーなど、本周りのアイテムに人気が集まっています。
古川紙工としても、いつものテイストとはだいぶ違うので、新しいお客様のもとに商品が届いたのではないかなと思います。私は販促を担当しましたが、安村の描いた原稿用紙のイラストを店頭POPに使い、文豪感を出す工夫をしました。また安村と販促のインスタライブをしたのですが、その際にも視聴者の方から「この作家さんのものが欲しい!」という声が上がってきました。そういう生の声を形にしていけたらうれしいですね。既存のお客様には、文房具を通して作家への関心が湧く、という流れもあるかもしれません。

春には第二弾も発売予定ですよね。お客さんが作家の新作を待つかのように文豪グッズを待っていてくださっていると思うと、また次をお届けできるのが楽しみです。
私たちもいろんな文豪と出会えるのが楽しみです。よろしくお願いします!
4人の文豪別に紹介。個性が光るモチーフに注目!
梶井基次郎
何と言っても『檸檬』。丸善とのゆかりのグッズも登場
代表作『檸檬』のモチーフを中心に、作中に登場する煙管(キセル)や、丸善で「檸檬」にちなんでオリジナルアイテムが発売されてきた万年筆やアテナインキがモチーフになりました。4人の中でも人気ナンバーワン!

谷崎潤一郎
『細雪』に代表される、女性的な雰囲気を散りばめて
代表作『細雪』に描かれる桜、『春琴抄』に登場する三味線のほか、女性をテーマにした作品が多いことから、櫛やリボンのモチーフを選びました。また作品にも登場し、猫好きとして知られていたことから、猫のモチーフも。

太宰治
好きな食べ物や嗜好品、中原中也との「喧嘩エピソード」も
作品『津軽』にも登場し、太宰自身も好きだったという、蟹やリンゴ酒、煙草が登場。また酔っ払った中原中也が、初対面の太宰治に「青鯖が空に浮かんだような顔だ」と言ったというエピソードから、サバもモチーフに。

中原中也
『サーカス』を連想させるミステリアスな世界観で
代表詩『サーカス』のイメージから、テントやガーランド、自転車のモチーフを、またサーカスを収録した生前唯一の詩集『山羊の歌』から、ヤギをセレクト。トレードマークだったソフト帽もモチーフになりました。

撮影 小川久志
構成・文 吉野ユリ子