科学・哲学・宗教の三面をあわせもつ普遍的な仏教思想、唯識。「すべては心の中の出来事にすぎない」とする、この大乗仏教の根本思想は、八種の識が世界を生み出し、心に生じる感情や思考は表層に現れると説く。不可思議にして深淵な心の構造を深層から観察・分析し、その秘密を解く唯識思想とは何か。この古くて新しい思想を解説する最良の唯識入門。
「ほんとうに、私が認める自己や他人や自然や宇宙はあるのでしょうか。もちろんあるかもしれません。しかし、それはあくまで推測であり、決定的に正しい判断ではありません。まず私が認めるべきことは、現に具体的に認識している自己・他人・自然・宇宙は私の心の中にあるという事実です。」(第一章「一人一宇宙」より)
[本書の内容]
第一章 一人一宇宙
第二章 心が迷う
第三章 意識の働き
第四章 心は微細に働く
第五章 自我に執われてしまう人間
第六章 すべてのものは心が生み出す
第七章 新しい身体観
第八章 心の深層が作り出す自然
第九章 ヨーガの生活
第十章 さわやかな覚醒の朝を迎える
第十一章 他者のために生きる
第十二章 「唯識」をいまに生かす
原本あとがき
学術文庫版あとがき