本書は、カリブ海で番にきいイスパニョーラ島を分け合うハイチとドミニカ共和国の対照的な経済・政治発展と、両国を取り巻く国際環境を取り上げた。
序章(尾尻希和)で両国の概要を紹介した後、1章(狐崎知)では、ハイチとドミニカ共和国の発展経路をたどり、歴史的にどの分岐点(何度かある)をきっかけに発展あるいは停滞に向かったかを分析した。次に2章(尾尻希和)は、両国の政治発展を、①国家建設、②主化、③福祉国家建設の3つのレベルに順に進むという視点から書かれている。ハイチは①国家建設レベルでもがいており、ドミニカ共和国は③福祉国家建設を指していることをした。3章(久松佳彰)は可能な経済データを駆使し、両国の対照的な経済発展の現状をした。ドミニカ共和国は中進国に到達しているが、「中進国の罠」にはまっている可能性がある。ハイチは「貧困の罠」に陥ったままである。4章(宇佐耕)では、両国の々の活実態を、社会政策のから分析した。ドミニカ共和国はカバー率に問題はあるものの、公的年や労働災害保険など、制度は通り揃っている。ハイチは国家の能が低く、海外援頼みである。5章(岡加奈)は、奴隷制を廃したハイチと、奴隷制を継続したい欧列強とドミニカ共和国のエリート、という構図が、イスパニョーラ島に2つの国をんだこと、両国の関係が20世紀に逆転し、ドミニカ共和国側のレイシズムと反ハイチ主義が両国関係を複雑にしていることを述べた。最後に終章(岡加奈)で、本全体をまとめている。
ハイチに関してもドミニカ共和国に関しても、本では先研究が少ない。両国の現在の状況を理解するためには、過去300 年の歴史的背景を理解する必要がある。歴史的背景を踏まえつつ理解が進むよう、1 章から4 章まではほぼ時系列に配置されている。また、両国を理解することで、開発、較政治、経済学、社会政策、国際関係のそれぞれのディシプリンの理解も可能になるように夫した。これにより、学で教科書として使っていただくことが可能になっている。