• 発売日:2024/11/07
  • 出版社:南江堂
  • ISBN:9784524211593

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肝臓専門医テキスト(改訂第4版)

肝臓専門医テキスト(改訂第4版)

通常価格 16,500 円(税込)
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商品説明
肝臓専門医研修カリキュラムに則った目次立ての,日本肝臓学会による公式テキストの改訂第4版.今版では新項目の追加と,肝疾患診療の進歩に伴う内容のアップデートを行っており,基礎的な内容から疾患ごとの詳細知識まで,専門医に求められる幅広い情報を網羅している.肝臓専門医試験受験者のみならず,専門医取得者にとっても最新知見を学ぶのに有用な一冊.
目次
【書評】
「日常診療で肝疾患に関する疑問が生じたときの必携書」
 日本肝臓学会編集の『肝臓専門医テキスト』は,肝疾患に関する包括的かつ実践的な解説書として,肝臓病学のみならず医療行政の観点からもきわめて重要で,実地臨床において非常に役立つ書籍となっている.本書は2013 年に初版が出され,その後定期的に改訂を重ねて,このたび改訂第4版が発行された.「基本的事項」「肝疾患」「胆道疾患」「腹腔疾患」「行政と肝疾患診療」という形で章立てされ,特定の疾患のみならず肝関連疾患全体を網羅する解説書となっている.

 日本肝臓学会の専門医制度は1989 年に発足し,1993 年に第1 回の専門医認定試験が行われ,その後回数を重ねて現在8,000 名を超える肝臓専門医が全国の医療機関などにおいて診療および指導にあたっている.日本専門医機構では,内科系において15 のサブスペシャリティ領域を機構認定専門医としている.肝臓専門医の総数は内科系臓器別専門医数で3 番目に多く,たくさんの医師が全国の地域で肝疾患の診療にあたっている.消化器領域では,数多くの専門医のうち,日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会・日本肝臓学会の3 学会の専門医が機構認定医として認められている.また日本専門医機構は,専攻医を指導できるのは各領域の指導医のみであることを明言している.すなわち,若い先生方にとっても,将来専攻医指導を行ううえで日本肝臓学会の認定医を取得しておくことは非常に重要になってくると思われる.

 最近の数年間で肝疾患診療は大きな変化を遂げた.C 型肝炎においては,非代償性肝硬変に対してもDAA 製剤が認可され,予後改善を含めた臨床的有用性が示されている.B 型肝炎においては,副作用対策などを考慮して,さまざまな核酸アナログ製剤が上市されている.肝がんに対しては免疫チェックポイント阻害薬が使用可能となり,複数の分子標的治療薬とともに治療の選択肢が大きく広がっている.一方で,これまでの薬剤とは異なる有害事象も生じることから患者背景など,さまざまなことを考えながら各種薬剤を使いこなすことが求められている.また,外科的治療やインターベンションナルラジオロジー(IVR)に関しても,分子標的治療薬との集学的治療などのさまざまな領域で大きく進歩している.肝疾患の成因も大きく変わり,昨年の日本肝臓学会による5 年ぶりの全国調査では,非ウイルス性の肝疾患が著増していることが明らかとなった.脂肪性肝疾患に関しては大きな名称変更が行われた.最大の要因であるアルコール性肝疾患に対しては減酒療法などの新しい概念を知っておく必要がある.肝臓専門医は肝疾患の診療のみならず,社会的にも肝炎対策基本法や身体障害者福祉法などにおいて,役割が大きく広がっており,今後もますます大きくなっていくと考えられる.

 同じく南江堂より発行されている『日本肝臓学会肝臓専門医認定試験問題・解答と解説』は,2004 年の第1 集から始まり,すでに第6 集まで出ており,時代の変化にあわせた良問がカテゴリー別にまとめられていることから,多くの受験生に利用されてきた.

 一方で,『肝臓専門医テキスト』は肝疾患に関する最新の情報を含めて,肝臓専門医として必要な知識を学べるとともに,肝臓病学の系統的な理解を助けるように構成されている.肝臓専門医認定試験の受験対策だけでなく,すでに専門医資格を有している先生方にとっても,最新の知識を整理する日常診療の参考書として役に立つ一冊であると考える.本書は肝臓病学の専門家のみならず,肝疾患の診療に携わるすべての医療従事者にとって必携の書といえる.

臨床雑誌内科135巻5号(2025年5月号)より転載
評者●吉治仁志(奈良県立医科大学消化器・代謝内科 教授)


【序文】
 肝硬変や肝細胞癌などの慢性肝疾患による死亡は,年間4 万~ 5 万人にのぼると推計されています.国民の死亡原因のなかで大きなウエイトを占めるとともに,有病率も高く国民の健康・福祉を脅かす著しい問題となっています.国も2009 年に「肝炎対策基本法」を制定し,その克服に向けて国を挙げて対策を講じているところです.慢性肝疾患を引き起こす原因は極めて多様です.主だったものだけを列挙しても,B 型やC 型のウイルス性肝疾患,アルコール関連肝疾患(ALD)・代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)・代謝機能障害アルコール関連肝疾患(MetALD)などの生活習慣に基づくもの,自己免疫性肝疾患など,極めて多彩です.肝硬変の合併症も,肝性脳症,難治性腹水,門脈圧亢進症,食道・胃静脈瘤出血,肝腎・肝肺症候群,感染症など極めて多岐にわたります.肝癌の早期診断は,日本は世界でも屈指のレベルに達していますが,治療も従来の外科治療やラジオ波焼灼治療以外に,進行肝癌に対する分子標的治療薬や免疫治療薬の選択肢が増えてきています.最近,頻度は減ってきましたが,急性肝不全も,突然発症し死にいたる病として,極めて重要な疾患です.究極の肝不全治療法である脳死あるいは生体肝移植は内科・外科の密接な連携のもと行われています.このように,肝疾患の診療は極めて専門性が高く,また裾野の広い分野です.また,複雑な病態を理解するためには,深い知識が必要です.
 日本肝臓学会では,肝疾患診療のエビデンスとして,「B 型肝炎治療ガイドライン」,「C 型肝炎治療ガイドライン」,「肝癌診療ガイドライン」,「NAFLD/NASH 診療ガイドライン」,「肝硬変診療ガイドライン」を出版してきました.また,ガイドラインとは別に,わかりやすく疾患を解説した書籍として,「慢性肝炎・肝硬変の診療ガイド」,「肝癌診療マニュアル」,「NASH・NAFLD の診療ガイド」「, アルコール性肝障害(アルコール性肝疾患)診療ガイド」「, 門脈圧亢進症の診療ガイド」「, 肝生検ガイダンス」などを出版しています.
 この「肝臓専門医テキスト」は,特定の疾患に焦点を合わせたものではなく,まさに肝疾患全般にわたって,基礎的知識から臨床的事項まで網羅した解説書です.日本肝臓学会の専門医制度は,1989 年に認定制度を発足させ,2002 年に専門医に呼称変更し,現在は日本専門医機構が認定する内科系subspecialty 15 領域のひとつになっています.この書籍は,これから肝臓専門医を目指す若い先生方の参考になるように,企画広報委員会が作成したものです.今回4 回目の改訂となり,最近の肝疾患診療の急速の進歩を踏まえ,内容を刷新しました.また,移行期医療のなかで,重要な疾患になっている「FALD」も新たにトピックスとしてとりあげました.すでに専門医を取得された先生方にとっても,ご自身の専門知識のアップデイトに最良の書籍になっていると思います.ご活用を期待しております.
 最後になりましたが,多忙な臨床や研究業務のなか,ご執筆いただいた諸先生方に,心より感謝申し上げますとともに,出版にあたってご尽力いただいた南江堂の諸氏にも深謝申し上げます.

2024 年10 月
一般社団法人日本肝臓学会 理事長
竹原 徹郎


【目次】
Ⅰ章 基本的事項
 A.肝・胆道の解剖と機能
  1 肝の解剖,区域,亜区域
  2 肝の脈管構造
  3 肝臓の構成細胞,Zonation
  4 肝細胞の機能
  5 胆道の構造と機能
  6 薬物代謝
  7 アルコール代謝(遺伝的素因を含む)
  8 胆汁分泌機構
 B.病態生理
  1 ウイルス肝炎の発症機序(免疫の関与を含めて)
  2 ウイルス肝炎の臨床像と慢性化(特にB型肝炎におけるgenotypeの関与)
  3 肝炎ウイルスの感染様式
  4 HBe抗原セロコンバージョンの意義
  5 肝炎の再活性化の機序(de novo B型肝炎を含む)
  6 急性肝不全の発症機序
  7 肝再生の機序
  8 肝発癌の機序
  9 肝細胞傷害機序
  10 肝性脳症の病態
  11 肝線維化の機序
  12 インスリン抵抗性と肝疾患
  13 一塩基多型(SNP)の意義と肝疾患診療との関連
  14 門脈圧亢進症の病態
  15 腹水の発生機序
  16 黄疸・胆汁うっ滞の発生機序
Ⅱ章 肝疾患
 A.検査
  1 肝機能検査
   ①肝予備能評価[Child-Pugh score(分類),肝障害度,ALBI grade,MELD score]
   ② その他の肝機能検査
  2 肝炎ウイルスマーカー
   ① HA抗体,IgM-HA抗体,HAV RNA
   ② HBs抗原・抗体,HBe抗原・抗体,HBc抗体,IgM-HBc抗体,HBc関連抗原,HBV DNA,HBV genotype,変異株,HBV PCR
   ③ HCV抗体,HCV RNA,HCVタイピング(serotype,genotype),HCVコア抗原,HCVコア領域(70番・91番)アミノ酸変異,ISDR,DAA耐性変異
   ④ HDV抗体,HDV RNA
   ⑤ HEV抗体(IgM-HEV抗体,IgA-HEV抗体,IgG-HEV抗体),HEV RNA
   ⑥ EBV,CMV
  3 免疫学的検査
  4 腫瘍マーカー
   ① AFP,レクチン結合型AFP
   ② PIVKA-Ⅱ
   ③ CEA
   ④ CA19-9
  5 線維化関連マーカー
  6 尿ビリルビン,ウロビリノーゲン
  7 画像診断
   ① 腹部単純撮影
   ② CT
   ③ 排泄性胆道造影
   ④ 直接胆道穿刺法
   ⑤ 腹部血管造影
   ⑥ 核医学検査
   ⑦ 超音波検査
   ⑧ 肝硬度評価法
   ⑨ 磁気共鳴画像(MRI)
   ⑩ 超音波誘導下穿刺・生検(肝生検,腫瘍生検を含む)
   ⑪ 胆道鏡検査
   ⑫ 腹腔鏡検査
  8 肝臓の病理診断
  9 腹水穿刺
  10 腹水一般検査
  11 肥満度/体格指数
  12 経口糖負荷試験,IRI,HOMA-IR,HOMA-β
 B.食事・栄養療法・生活指導
  1 肝硬変に対する栄養療法
   ① 就寝前補食(LES)
   ② 分割食
  2 C型肝炎に対する鉄制限食
 C.薬物療法
  1 ウイルス性肝炎に対する薬物治療
   ① B型肝炎に対する治療薬(インターフェロン,核酸アナログ)
   ② C型肝炎に対する治療薬(インターフェロン,DAA)
  2 肝庇護療法(ウルソデオキシコール酸(UDCA),グリチルリチン製剤)
  3 分岐鎖アミノ酸製剤,アルブミン製剤
  4 利尿薬
  5 ステロイド治療・免疫抑制薬治療
  6 分子標的治療薬
  7 がん免疫療法
  8 その他(ベザフィブレート,ビタミンC,E,インスリン抵抗性改善薬など)
  9 予防薬
   ① 肝炎ワクチン
   ② 免疫グロブリン製剤
   ③ 発癌予防薬
 D.専門的治療
  1 経皮経肝胆管ドレナージ(PTBD),経皮経肝胆のうドレナージ(PTGBD)
  2 経皮的膿瘍ドレナージ
  3 肝動脈塞栓療法(TAE),肝動脈化学塞栓療法(TACE),肝動脈化学療法(TAI)
  4 動注化学療法
  5 経皮的エタノール注入(PEI)
  6 マイクロ波焼灼療法
  7 ラジオ波焼灼療法
  8 内視鏡的治療手技(EST,EPBD,EBD,ENBD)
  9 がん化学療法(分子標的治療薬、免疫療法も含めて)
  10 血漿交換,血液濾過透析療法
  11 放射線治療
  12 門脈圧亢進症の治療
   ① 食道(胃)バルーンタンポナーゼによる止血
   ② 内視鏡的静脈瘤硬化療法(EIS)
   ③ 内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)
   ④ バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO)
   ⑤ 経皮経肝的門脈塞栓術(PTO)
   ⑥ 経頸静脈的肝内門脈大循環短絡路(TIPS)
   ⑦ 経皮的シャント塞栓術
   ⑧ 部分的脾動脈塞栓術(PSE)・脾臓摘出術(脾摘)
  13 肝性脳症の治療
  14 瀉血療法
  15 肝胆道疾患の手術療法
   ① 肝切除術式(葉切除,区域切除,亜区域切除など)
   ② 肝切除の適応疾患と適応条件
   ③ 胆道再建法
  16 肝移植
   ① 肝移植の適応条件と適応疾患
   ② 脳死肝移植の臓器分配
   ③ 生体肝移植ドナーの適応基準
   ④ 肝移植の合併症
   ⑤ 肝移植後の抗ウイルス療法
 E.疾患
  1 急性肝炎(A型肝炎,B型肝炎,C型肝炎,D型肝炎,E型肝炎)
  2 急性肝不全
  3 慢性肝炎
   ① B型慢性肝炎
   ② C型慢性肝炎
   ③ 非B非C型肝炎
  4 その他のウイルス肝炎
  5 自己免疫性肝炎
  6 肝硬変(アルコール性,ウイルス性を含む)
  7 原発性胆汁性胆管炎(PBC)
  8 原発性硬化性胆管炎(PSC)
  9 肝内胆汁うっ滞(進行性家族性肝内胆汁うっ滞症)
  10 アラジール症候群/非症候性肝内胆管減少症
  11 胆道閉鎖症(先天性胆道閉鎖症)
  12 閉塞性黄疸
  13 体質性黄疸
  14 薬物性肝障害
  15 アルコール関連肝疾患
  16 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)
  17 肝感染症
   ① 肝膿瘍(細菌性,アメーバ性)
   ② 肝寄生虫症
   ③ Weil病
   ④ クラミジア,淋菌(Fitz-Hugh-Curtis症候群)
   ⑤ 肝結核
   ⑥ 梅毒
  18 肝のう胞
  19 カロリー病/先天性肝線維症
  20 肝良性腫瘍
  21 原発性肝癌
   ① 肝細胞癌
   ② 肝内胆管癌(胆管細胞癌)
   ③ その他の肝悪性腫瘍
  22 転移性肝癌
  23 門脈圧亢進症(食道・胃静脈瘤を含む)
  24 特発性門脈圧亢進症
  25 肝外門脈閉塞症
  26 Budd-Chiari症候群
  27 肝類洞閉塞症候群(SOS)/肝中心静脈閉塞症(VOD)
  28 FALD
  29 代謝性肝疾患(糖原病,肝アミロイドーシス,ヘモクロマトーシス)
   ① 糖原病
   ② 肝アミロイドーシス
   ③ ヘモクロマトーシス
   ④ Wilson病
   ⑤ 肝性ポルフィリン症
   ⑥ 尿素サイクル(代謝)異常症
   ⑦ 脂質蓄積症(ライソゾーム病を含む)
   ⑧ シトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞(NICCD)
  30 放射線肝炎
  31 Reye症候群
  32 肝内結石症
  33 全身疾患と肝
   ① 甲状腺疾患
   ② 肝腎症候群
   ③ 循環不全
   ④ 自己免疫疾患(膠原病)
   ⑤ 血液疾患
   ⑥ 消化器疾患
   ⑦ 血球貪食症候群(HPS)
   ⑧ IgG4関連疾患
   ⑨ HIV感染症
  34 新生児肝炎
  35 小児肝疾患の移行期医療
  36 妊娠と肝
Ⅲ章 胆道疾患
  1 胆石症
  2 胆道感染症
  3 胆のう腺筋腫症
  4 胆のう胆道腫瘍
  5 膵・胆管合流異常
  6 先天性胆道拡張症
Ⅳ章 腹腔疾患
  1 特発性細菌性腹膜炎
Ⅴ章 行政と肝疾患診療
 A.肝疾患診療に関する病診連携
  1 肝疾患診療連携拠点病院ならびに肝疾患診療ネットワーク
  2 肝疾患治療パス
 B.肝疾患診療に関連する法律,制度
  1 B型肝炎母子感染防止対策
  2 肝炎対策基本法
  3 肝炎治療特別促進事業(医療費助成制度)
  4 改正臓器移植法
  5 身体障害者福祉法
  6 肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業
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