薬学部での漢方教育のコアとなる内容をまとめた教科書.薬学教育モデル・コアカリキュラム(平成25年度改訂版)「E2(10)医療の中の漢方薬」を10~12回の講義で扱うことを想定した構成.臨床現場での漢方薬の新しい使い方,漢方薬の服薬指導などについても記載.今改訂では第十七改正日本薬局方第二追補などの最新情報に対応したほか,ドーピングに関して項目を新設した.
【改訂第3版の序】
日本生薬学会監修の教科書『現代医療における漢方薬(改訂第2版)』は、薬学教育モデル・コアカリキュラムの改訂と第十七改正日本薬局方の公布に対応する形で2016年に上梓されました。幸い、本教科書は多くの薬学部における漢方教育に活用されてきましたが、改訂から4年が経ち、研究の進歩や日本薬局方の改正などへの対応が必要になったことから、本書を改訂することになりました。
前回の改訂では、それまで薬学教育モデル・コアカリキュラムの中で生薬学・天然物化学と同じ「C7自然が生み出す薬物」に置かれていた漢方が、モデル・コアカリキュラムの改訂で「E2薬理・病態・薬物治療」の中に「医療の中の漢方薬」として組み入れられたことを踏まえて、実際の治療に用いられる漢方処方の解説に重点を置くことにしました。そして、個々の生薬の解説を大幅に縮小し、漢方薬の副作用や臨床現場での漢方薬の新しい使い方並びに漢方薬の服薬指導を追加しました。また、薬学部での漢方教育のコアとなる内容をカバーする教科書を目指し、改訂薬学教育モデル・コアカリキュラムの内容を10~12回の講義で教えることを想定して内容を整理することで、薬学部における漢方教育で標準的に使える教科書となることを意図して編集しました。
今回の改訂では、改訂第2版の構成は変えずに、日本薬局方の改正や医薬品添付文書の改訂、関連領域の研究の進歩などに対応した記述の変更を中心としました。また、漢方薬の使用が拡大する中で各種診療ガイドラインに記載された漢方薬の使われ方をアップデートするとともに、漢方薬とドーピングに関するコラムを加えました。本書は、薬学部における漢方教育で標準的に使える教科書となることを意図して編集されたものですが、漢方の基本テキストとして多くの方々に広く活用して頂ければ幸いです。
最後に、本書の改訂作業をサポートして頂きました南江堂の皆様に心から感謝申し上げます。
2020年1月
日本生薬学会
編集委員一同