ライトノベルとは、その表現がパターンの組み合わせによって構成されていることが自覚された小説である。この自覚は、物語やキャラクターを独創的・唯一的なものとして捉えることを困難にしてしまう。しかしゼロ年代(2000年~2009年)頃におけるライトノベル作品には、表現がパターンの組み合わせであることを引き受けた上で、それでも物語やキャラクターを唯一的なものとして描こうとする多様な試みが認められる。その萌芽を示した『スレイヤーズ』、そして『涼宮ハルヒの憂鬱』『キノの旅』『All You Need Is Kill』『とある魔術の禁書目録』『僕は友達が少ない』『ソードアート・オンライン』というゼロ年代を代表する諸作品を詳細に読解し、それぞれのストラテジーを明らかにする。
目次
序 章 ライトノベルのストラテジー 第一章 類型性への抵抗──神坂一『スレイヤーズ』論 第二章 交換不可能な大衆──谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』論 第三章 世界の中の旅人──時雨沢恵一『キノの旅』論 第四章 孤独をわかちあうこと──桜坂洋『All You Need Is Kill』論 第五章 シミュラークルの主人公──鎌池和馬『とある魔術の禁インデックス書目録』論 第六章 日常と変化──平坂読『僕は友達が少ない』論 第七章 ライトノベルにおける現実──川原礫『ソードアート・オンライン』論 終 章 ライトノベル・単独性・キャラクター