• 発売日:2017/08/31
  • 出版社:新評論
  • ISBN:9784794810731
通常価格 3,960 円(税込)
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商品説明
 本書の原著は2015年12月、「ジハード(聖戦)」を称する一連のテロがパリを標的として相次いだ年の暮れに刊行された。中東では前年にイスラム主義(=政治的イスラム)の極度に暴力的かつ全体主義的な変容である「イスラム国(IS)」の樹立が宣言され、フランスからも若者数百人が合流するという前代未聞の状況が発生、パリでのテロはこれと連動していた。
 イスラム主義研究の国際的権威G・ケペルを主著者に、若い政治学者A・ジャルダンが執筆に参加した本書は、イスラム主義の過激な派生現象としてのジハーディズムと、イスラム教徒移民およびその子孫が構成する「フランスのイスラム教徒」という二つの対象に焦点を当て、パリを襲ったテロの「起源」を描き出そうとする。ヨーロッパ市民として育った若いイスラム教徒移民二世あるいは改宗者が、家庭環境や社会・経済・政治状況に方向づけられつつ、「アルカイダ後のジハード」の遂行者へと変貌するプロセスのケーススタディである。
 ウェブ時代にあってイデオロギーの拡散に国境はない。日本人犠牲者も出た。本書を通して浮かび上がるグローバル・ジハードのパラダイムは、ジハーディズムの今後の変転を予測するうえで、日本においても重要な基礎資料となろう。
 本書はまた、あらゆる本質主義的イデオロギーの政治化がもたらす暴力性について貴重な示唆を含む。民族や宗教上の復古的理想像を「アイデンティティー」として称揚するイデオロギーが政治化すれば、民主主義がそれぞれ一定のルールの下に確保すべき個人の自由は脅かされる。新自由主義(ネオリベラリズム)により加速した社会的矛盾の解決は、民主主義下での自由への攻撃ではなく、弛まぬ包摂の努力により見出すべきではないか。
 イスラム主義の浸透と極右の伸張、社会との断絶と被害者意識による扇動、極左運動の遺産、そして共和国の統合原理としての「非宗教性(ライシテ)」本書には、現代のフランス社会を新たな角度から理解するための貴重な鍵がいくつも含まれている。加害者と被害者という亀裂のイデオロギーを退け、西洋とイスラムの一般市民への信頼を表明し続けるケペルは、原著刊行から半年後、ジハーディストによる威嚇を受ける事態にも直面した。
◎エマニュエル・トッド『シャルリとは誰か?』への批判的論考を含む注目作。
(よしえ・まきこ パリ在住 翻訳家)
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