序論
1 本書の主題
2 リクールの思索の歩み――自己の解釈学
3 方法としての批判的再構成とその問題点
4 リクール哲学の現代的意義
5 先行研究
6 本書の構成
第Ⅰ部 人間の生
第1章 意志論――意志することは創造することではない
序 『意志的なものと非意志的なもの』
1 決意、企投、計画
2 熟慮の不完全性――状況の切迫性と状況への被投性
3 流されながら熟慮する――自己理解の深化と企投の判明化
4 『意志の哲学』における想像力
第2章 フロイト論――説明と理解
序 リクール哲学とフロイト精神分析
1 『意志的なもの』における精神分析論
(1)「無意識的なものの実在論」への抵抗――「高邁さ」と「自己蔑視」
(2)還元と治療――医療としての精神分析
(3)質料と形相の同一説
(4)「動機」と「原因」――精神分析の混淆的な語り
2 『試論』における精神分析論
(1)始源論と目的論の弁証法
(2)精神分析は観察科学ではない
(3)精神分析と歴史学――ウェーバーのメタ歴史学との距離
(4)転移あるいは解釈学的循環
3 「検証論文」における精神分析論
(1)説明と理解の協働と物語
(2)治療的介入とその根拠
第3章 悪論――情念あるいは幸福の条件
序 悪の問いとカント哲学
1 告白による悪の成立――悪を引き受ける自由
2 悪のパラドクス――リクールの解決
3 情念による不自由――隷属的意志のパラドクス
4 『人間学』の情念論――理性の形式的原理あるいは賢明さの命法
5 幸福への運動と情念――人間の精神性と共同性
第4章 イデオロギー論――問題としての良心
序 現代思想と良心批判
1 問題の導入――良心と権力
(1)マッキンタイア
(2)フーコー
(3)バトラー
(4)リクール
2 啓蒙主義者フロイト――神経症の治療をめぐって
(1)道徳的マゾヒズム――個人の超自我と文化の超自我
(2)フロイトの治療法1――抑圧された記憶の意識化と抵抗の克服
(3)フロイトの治療法2――「患者を人生に対してより強靭にする」
3 リクールのイデオロギー論
(1)教育の形式と実質
(2)イデオロギー批判――科学とフィクション
第Ⅱ部 解釈的想像力
第5章 詩的作品の解釈学――フィクション・隠喩・想像力
序 反省哲学と解釈学
1 1970年代のフィクション論
(1)言語の詩的な働き――間接的な真理主張
(2)ディスクールとしての詩的作品――構造主義批判
(3)エクリチュールとパロール
(4)テクスト世界――虚構の世界か現実の世界か
2 『時間と物語』のフィクション論
(1)ミメーシスの循環
(2)テクスト世界と内在における超越――再形象化
(3)コミュニケーションとしての解釈
(ⅰ)説得の戦略――情動的反応と道徳的評価
(ⅱ)内在する作者とフィクション――内在する意図と外在する意図
3 隠喩解釈と想像力――自由な遊び
(1)生きた隠喩
(2)隠喩解釈の創造性――先行する隠喩論との対話
(ⅰ)ブラックの隠喩論
(ⅱ)ビアズリーの隠喩論
(3)隠喩解釈と想像力――隠喩論と図式論
(4)生きた隠喩と美的理念
第6章 物語的アイデンティティ論――統合形象化と想像力
序 『時間と物語』という著作
1 統合形象化
(1)時間的統一性と目的論的統一性
(2)統合形象化とエピソード化
(3)物語文と因果連鎖
(4)物語ることと想像力
2 物語ることと人間の生
(1)『意志の哲学』と『時間と物語』
(2)『時間と物語』の物語的アイデンティティ論
(3)『他者のような自己自身』の物語的アイデンティティ論
第7章 フロネシス論――反省的判断力と物語的アイデンティティ
序 フロネシス論としての反省的判断力論――美的判断の再倫理化
1 アーレントの政治的判断力論――共通感覚と反省的判断力
(1)行為者モデルの判断力論、あるいは常識としての共通感覚
(2)観察者モデルの判断力論、あるいは反省的判断力としての共通感覚
(3)私的領域と思慮
2 マッキンタイアの自己物語説――物語的探求とは何か
(1)行為の理解可能性と物語
(2)実践――内的善と徳
(3)物語的探求――諸善の統合
3 リクールの物語的アイデンティティ論――物語的探求と反省的判断力
(1)人生構想とフロネシス
(2)解釈学的循環と反省的判断
結論
文献略号一覧/注/参考文献一覧
あとがき