廃仏毀釈や神仏分離、西洋文明の流入など、近代日本仏教が蒙った急激な社会的・文化的変化のなかで、「秘密教」や「旧仏教」などとも称された真言宗教団は、よりいっそう厳しい社会的試練にさらされることとなった。
そうした時代状況のもと、近代的価値に耐え、かつそれに合致する真言宗教団を構築すべく奔走したのが、富田學純(とみた・こうじゅん 1875~1955)である。
新興教団である真言宗豊山派教団の中枢にあって教団の体制確立に尽力したほか、積極的な出版活動、「遍路同行会」の結成、そして宝仙学園創設など、多様な事業を展開し、宗門内で閉ざされていた「秘密教」の門戸を世間へと解き放った〝真言宗教団開明派の旗頭〟としての姿を鮮やかに浮き上がらせる。
■目 次■
はじめに
第一章 富田學純の経歴と業績をたどる
第二章 富田學純と『興教大師全集』
第三章 富田學純の著作と出版物
第四章 富田學純と四国遍路、そして遍路同行会
第五章 宝仙寺富田學純と社会貢献──宝仙学園の創設とその発展──
おわりに