ドイツはIASB(国際会計基準審議会)が開発するIFRS(国際財務報告基準)を無条件に導入しているのではなく、英語版のIFRSをEU法の一部としての「国際的会計基準」(ドイツ語版)に置き換えて適用可能にしている点を見逃してはならない。ドイツは"IFRSと等価でかつ効率的な代替モデル”の創造に向けて、HGB(商法典)会計のアップデートを目指しているのであり、その際に「国際的会計基準」「資本市場指向」「規制緩和」概念が、IFRSとの一定の距離感、すなわち"適度な接近”を支えるキーワードになっている。
つまり、IFRSの受容か拒否か、強制適用化任意適用化、あるいは連結か個別かといった単純な二元論を超えて、IFRSに向けたより戦略的なアプローチを見出すことができる。その意味で、近年のドイツの制度改革のあり方は、IFRS対応に伴う我が国の制度設計の場面で大きな示唆を与えるものと考える。