地球温暖化をはじめとする気候変動や感染症のパンデミックなど,地球規模での大きな危機が,自然と人間の関係の問い直しを迫っています。その際に重要になるのは,人間を中心におくのではなく,人間以外のものを含む多様な存在が織りなす環境の一部として,人間をとらえようという視点です。教育や保育の世界でもそうした視点からのポストヒューマニズムという思想運動が影響力を持ち始め,子どものとらえ方を大きく変えようとしています。
そうした動きをとらえ,本誌では,巻頭特集「見られる身体」,特集1「ポストヒューマニズムと子どものエージェンシー」,特集2「構造とケアの現代的課題に迫る」,特集3「子どものこころとからだ」の4つの特集を企画しました。
これらの4つの特集を貫いて浮き彫りになっているのは,権利を奪われ不可視化されている子どもの声の存在です。特集1でムリスはそれを子ども期の「植民地化」としてとらえつつ,それを脱/植民地化していく可能性を模索しています。このムリスのマニフェストをてがかりとしながら,私たち自身の新しい子ども学のマニフェストをつくる,その第一歩に今回の4つの特集が貢献できれば幸いです。
(編集委員長 白梅学園大学・白梅学園短期大学学長 小玉重夫「まえがき」を要約)