生涯で2000人を超える被爆者を訪問し、1000人以上の「声」を聞きとり録音した、稀有な人物の仕事を網羅する全6巻シリーズの第1巻。
「この物語の主人公と、周辺の人々の本名をあかすことはできません。その理由は、この文章を最後まで読んでくだされば、お判りいただけると思います。いまから九年前収録され、ある場所に眠っている三巻の録音テープ。このテープのなりたちをめぐる事実を、自分の記憶が正確なうちに書きとめておくために。そしてもしできることなら、この文章を読んでくださるあなたにも、この録音テープをめぐるふしぎを、私といっしょに考えていただくために。」(『未来からの遺言』序文より)
被爆者の体験を記録する作業に取り組んでいた著者は、長崎で被爆した吉野啓二さんの話に深い感銘を受ける一方で、それとは矛盾するある思いを抱いた。吉野さんの語りを、自分はどのように受けとめたらよいのだろうか——。
被爆者という存在のありよう、原子爆弾と人間との関係の本質を問いかける『未来からの遺言』と、これをもとに創作された『シナリオ 被爆太郎伝説』との合本。全6巻シリーズの第1巻。
〈伊藤明彦の仕事 全6巻〉
1 *
未来からの遺言——ある被爆者体験の伝記
シナリオ 被爆太郎伝説
2
原子野の『ヨブ記』——かつて核戦争があった
3
夏のことば——ヒロシマ ナガサキ れくいえむ
4
歌集 幾萬の黒こげのひと歩みゆく
5
ヒロシマ ナガサキ 私たちは忘れない
6
カセットテープ版 被爆を語る
(*は既刊、2024年12月現在)