この本は、基本的には大学受講生たちのために初めて作ったテキストであるが、企業の人事管理実務担当者にも役に立つことを期待しながら書いたものである。特に注意を払ったのは、概ね次のような 5 つのポイントである。
(1)人事部の役割にフォーカシング
本書では人事部の形成と発展の歴史を踏まえて、これからの人事部の役割変化に焦点を合わせてみた。具体的には、ANT の言う「アクター」として、人事制度やシステムという「ネットワーク構築者」の役割、若しくは「翻訳代理人」としての役割にフォーカシングする。
(2)理論と実務の連携
経営学は、そもそも理論ありきではなく、実務の世界で起こった様々なケースが、後にまとめられ体系化されたものなので、第4次産業革命の時代であると言われれた今の状況についても何か新しいフレームが必要ではないかと思われる。本書で ANT という、まだ一般には馴染みのない理論をベースに比較的新しい観点の人的資源管理論を展開してみようと試みた所以である。
(3)読者目線のテキスト
紙媒体よりスマホやタブレットに馴染んでいる近年の若者たちの特性を考慮し、電子媒体で読みやすい電子書籍の判型を選択した。
(4)考える力の涵養
体系的な思考と考える力を身に付ける訓練になるよう、それぞれの章末(Discussion 部分)に、授業内でグループ討議のテーマとして活用できる論題を提示した。
(5)日本型人的資源管理論の再評価
日本企業には戦前はもちろん戦後の高度成長期を経て、グローバル経済を牽引しながら独自に発展させてきた優れた人事組織マネジメントの伝統がある。アメリカンスタンダードの対せき点にある日本型の経営や人的資源管理は、今後もその潜在力を失うことはないと考えられる。本書が日本の大学生たちに日本型人的資源管理のこれまでと、これからを考えるきっかけになることを願いたい。
第1章 人的資源管理の意義
第2章 戦略的人的資源管理
第3章 ANTと人的資源管理
第4章 人事部
第5章 労働市場と雇用関係の変化
第6章 日本型人的資源管理
第7章 採用
第8章 異動(配置転換、昇進昇格)
第9章 退職
第10章 労働時間と労働環境
第11章 賃金と福利厚生
第12章 人事考課
第13章 人的資源開発
第14章 労使関係
第15章 グローバル化と人的資源管理