はじめに
本書は誘導モータの制御方法に関する入門書として、電気系の大学、高専卒業生などを対象に、できるだけわかり易く解説しました。
近年の世界的な脱炭素化の潮流に呼応して、電動機の利活用が再注目されて、専門書もたくさん出回っています( 文献[ 1] ~[ 4] など)。モータとしては、小型・高効率の永久磁石同期モータが注目を集めていますが、誘導モータもまだまだ生産台数では負けていません。永久磁石同期モータを駆動するには、インバータやマイコンによる制御が必須ですが、誘導モータは三相交流の直入れでも駆動できるという特長があります。駆
動方法も、ほぼ無調整・無設定で可変速駆動が可能なV/F 一定制御から、高応答・高効率なベクトル制御、さらには速度センサレスベクトル制御など、用途に応じて「 大化け」 する、非常に面白いモータであるといえま
す。その「 大化け」 を下支えしているのが「 制御技術」 といえます。
永久磁石を用いないことは、不可逆減磁などの心配はなく、極めて堅牢な、壊れにくいモータといえます。同じく永久磁石を用いないモータには、シンクロナス・リラクタンス・モータもありますが、三相交流の直入れで駆動はできません。用途、駆動方法の幅の広さでは、誘導モータが突出しているのではないでしょうか。
この魅力あふれる誘導モータの制御技術に関して、本書では全8 章で解説しています。
本書は、筆者が長年モータ制御技術者として得た知見を、なるべく次世代の方々へお伝えしたく執筆したものです。私をモータ制御技術者として育てて頂いた、(株) 日立製作所の諸先輩方や、長年、電気学会等で
貴重なご意見を頂いた研究者・技術者の皆様に、厚く御礼申し上げます。