皮膚病診療 2025年6月号
特集 薬疹と薬剤性皮膚障害~いま問題になっているのは何?
(浅井 俊弥 編集委員)
薬疹および薬剤による皮膚障害の診療は皮膚科医にとって,とくに他科との連携においてきわめて重要である.近年はさまざまな診療科で新しい薬理作用に基づいた新薬,とくに切除不能な悪性腫瘍に対する分子標的薬が登場し,それぞれの薬剤による特徴的な皮膚障害の報告をみることが多くなった.本号の冒頭で,日本皮膚科学会 SJS/TEN診療ガイドライン作成委員会の阿部理一郎先生らに,治療への対応が問題となっているエンホルツマブ べドチンによる薬剤性皮膚障害について解説いただいた.今後発症の増加が予想されるので,皮膚科医としての共通認識を深めることが重要である.
重症薬疹のStevens-Johnson症候群(Stevens-Johnson syndrome:SJS)/中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN),薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS),急性汎発性発疹性膿疱症(acute generalized exanthematous pustulosis:AGEP)についても,複数の報告をいただいた.診断,治療のアプローチが症例ごとに示されているので,今後遭遇した際の対応の参考にしていただきたい.
免疫チェックポイント阻害薬には,予期せぬ皮膚病変を生じることが知られている.本号では膿疱性乾癬,自己免疫性水疱症,サルコイド反応をきたした症例の報告を掲載した.
古典的な多形紅斑型,苔癬型などは最近影を潜めた感もあるが,報告は少ないものの日常的にもっともよく接する薬疹であり,これらについての診療も重要である.
SJS/TENの発症機序,重症薬疹のバイオマーカー,大学病院での薬疹患者の統計についても掲載があり,参考にしていただきたい.
皮膚科医は薬疹および薬剤による皮膚障害に関する情報を,常にキャッチアップしていかないといけない.情報の収集,集約,評価が必要であることを再認識するとともに,今後も本誌で定期的に特集を組み,発信していきたい.