特集 最近のBehçet病 (山本 俊幸 編集委員)
Behçet病は多彩な皮膚粘膜疹を呈するので,皮膚科医の役割は大きい.しかし教室員の態度をみていると,Behçet病患者をすぐに内科へ渡してしまい,情けなくなる.Behçet病に限らないが,どうも膠原病(や類縁疾患)=内科の疾患と思っているようである.主な症状が皮膚であれば,十分皮膚科で対処できるはずである.
本号ではBehçet病についての理解をもっと深めてもらうため,最新の病態,治療,臨床病理,統計などに焦点をあてて構成した.重複する部分もあるが,それぞれの観点から執筆いただいている.まず「Topics 1」ではBehçet病の病態についてMHC-I-opathyという新しい観点からの考え方,さらに臓器別症状を基にしたクラスター分類について,桐野洋平先生に解説いただいた.また,内科的な見地から疾患をより俯瞰的に捉え今後の展望についても触れていただいた.「Topics 2」では皮膚科から荒川明子先生に,病態がよく似ている乾癬と対比しながら,遺伝的背景の異なる2疾患についてHLA-class IリスクアレルとCD8陽性T細胞の活性化誘導を中心に詳細に解説いただいた.「総説」では臨床病理について,比較的まれな皮膚粘膜症状も取り上げてある.「治療」では,Behçet病の口内炎に対する新規治療でPDE4阻害薬が出たが,もう少し広い観点から中村晃一郎先生に執筆いただいた.また,「統計」では一施設における過去20年の推移を後方視的に検討し,他施設からのデータとも比較して草野美沙希先生に紹介してもらった.
「臨床例」は,学会抄録から探したが非常に少なかったため,福島県立医科大学からの症例にやや偏ってしまった.まれな経過や症状,合併症,他疾患との鑑別を要したBehçet病,逆にBehçet病との鑑別を要した症例,特殊型(血管型,腸管型)Behçet病など興味深い症例が並んでいる.
Behçet病の特集号は本誌の長い歴史の中であまりないようである.最近の進歩を意識しながらお読みいただければと思う.