皮膚病診療2024年増刊号
「すぐに役立つ すごく役立つ『皮膚科検査の基本マニュアル』 専門医試験対策にも」
監修にあたって 久保 亮治 編集委員
検査とは何か? それは患者さんの身体の中で何がおこっているかを探るための手段である.できるかぎり正確に何がおこっているかを把握することで病態を理解し,われわれは手持ちの武器を選んで最適な治療を選択する.時代とともに,検査方法は進歩し,病態の解明が進み,治療に用いることができる武器も多様化した.しかし,患者さんの身体の中でおこっていることは1 人1 人みんな少しずつ異なっている.典型例だけでなく非典型例の病態をも正確に把握するためには,さまざまな検査結果,その継時変化,治療への反応性,それらを総合的に捉える力が必要である.
検査結果を正しく理解し,偽陰性,偽陽性の可能性に思いを巡らせ,検査結果に反映されるあらゆる病態の可能性に心配りができるようになるためには,それぞれの検査の原理を正しく理解している必要がある.ただ,陽性か陰性かだけでなく,その数値の大小が何を意味するのか,陰性の場合に何を否定できるのか,何が否定しきれないのか,検査結果を読み取る力を鍛えることで,より深く病態を理解し,1 人1 人の患者さんの身体の中で何がおこっているかをより正確に捉えることができるようになると信じている.
本企画では,各領域のオピニオンリーダーの方々に原稿を依頼し,快く引き受けていただき,各検査のただ表面をなぞるだけではなく,その検査の奥にある仕組みや検査結果の意味を掘り下げる内容を書き記していただいた.執筆者の方々に心から感謝する.本書が,日々なんとなくわかったつもりになっていた検査結果を,より深く理解できるようなきっかけになってくれれば,そして読者の方々の日々の診療に何か少しでも役立つことができれば,編者冥利に尽きるというものである.ぜひ,隅々までお読みいただき,知識のアップデートにお役立ていただければと願っている.