■俳句界の巨魁・高濱虛子生誕150年
いまの俳句の源流(師系)は、ほとんど高濱虛子に行き着く。“女流俳人”が盛んになるきっかけをつくったのも虛子だった。虛子は俳句を〈極楽の文学〉と呼び、こう書いた。〈いかに窮乏の生活にいても、いかに病苦に悩んでいても、ひとたび心を花鳥風月に寄することによってその生活苦を忘れ病苦を忘れ、たとい一瞬時といえども極楽の境に心を置くことができる〉〈これによって慰安を得、心の糧を得、もって貧賤と闘い、病苦と闘う勇気を養うことができる〉(『俳句への道』。かな表記に一部変換)。俳壇に君臨した虛子が生まれて今年で150年。虛子を入り口に〈極楽の文学〉の魅力を紹介する。
●【業績】「写生」を有季定型に結晶
青木亮人
高濱虛子の最大の業績は近代俳句という器に魂を吹きこみ、有季定型で数多の声に「写生」を歌わせた点にある。その機微を概観してみよう。
●【評伝】職業としての俳句
岸本尚毅
大正昭和の俳壇に君臨した高濱虛子。俳人を職業として7人の子を養う。晩年には文化勲章を受章。その生涯はユニークな「成功物語」だった。
●私と虛子
池田澄子/稲畑廣太郎/岩田奎/奥坂まや/櫂未知子/如月真菜/斉藤志歩/野名紅里/村上鞆彦
俳句の世界は、どの師に学んだかという「師系」を重んじる。そして師系をたどると、ほとんどの俳人は虛子に行き着く。新進気鋭から中堅、ベテラン俳人が虛子への思いをつづる。(五十音順)
●【百句鑑賞】珠玉の花鳥諷詠詩を味わう
安原葉
虛子は生涯を通じ20万句を超える俳句を残したとされる。虛子から直接指導を受けた直弟子が100句を選び味わう。