はじめに
第1章 物語世界 小説のなかでは不思議なことが起こる
物語世界の不思議
「名人伝」――驚異の弓の達人
ありえない世界にひそむ日常の感覚
現実から非現実への移行
「デンドロカカリヤ」――自分の顔が裏返しになる!?
植物に変身する発作
人目が気になり、さびしさがつのる
ありふれた人間に起きる災難
ありえないことを受けとめる態度
小説とはなんだろう
第2章 寓意 物語が別のことを語る
物語にこめられる別の意味
「山椒魚」――寒いほどひとりぼっちだ!
さまざまな作中人物
心の中を覗いてみたい
青年の肥大した自意識
他人のことが気になりはじめる
「山椒魚」の物語=私たち自身の問題?
自意識を手がかりに読み直してみる
『砂の女』――奇妙な脱出の物語
名前を持たない「男」
生きることの不条理
第3章 ジャンル 自伝と自伝的小説はどう違うのだろう
ジャンルとは何か
自伝的小説と自伝
『福翁自伝』――二つの時代を生きた稀有な人生
事実を語る明朗な文体
自伝的小説の物語世界
「幼年時代」――詩人の複雑な子ども時代
語らずにはいられない出来事
自分は何者なのか
『仮面の告白』――性のめざめと存在への問いかけ
伝記的事実の反映
理知的で分析的な語り
みずみずしい内部感覚
事実を語るか真実を語るか
第4章 一人称の語り 時間を行き来する語り手
自分自身の経験を語る
『第七官界彷徨』――風変わりな家族
私の経験を通して理解する
語り手の裁量――何を語り、何を語らないか
漂う恋の気配
先さき廻まわりの語り
経験する私と語る私
「みちのく」――伝聞の語り
物語の「入れ子」構造
枠物語のしかけ
第5章 三人称の語り 他人の心の中を語る語り手
三人称の語りとは
彼? 彼女? 代名詞のゆれ
三人称の語り手の不思議な能力
「戯作三昧」――江戸のある一日
髪型で呼ばれる江戸の人々
ある老人
主人公、馬琴の心の動き
「枯野抄」――芭蕉とその弟子たち
他人の心の中を語る
コラム◎二人称語りの二つの機能
第6章 視点 人が違えば見える世界も違う
誰の視点で世界を見るか
「女賊」――盗賊の姉妹の物語
姉の視点に立つ語り
潜望鏡に映る物語の世界
作中人物のリアルな感覚
「飼育」――村に墜落した黒人兵
山育ちの少年から見る村の暮らし
少年は黒人兵をどう意識しているか
僕から見えるもの、見えないもの
誰の視点で語るかに注意する
第7章 小説が語ること すべて語るほかない/すべて受けとめるほかない
小説は何を語るのか
「白桃」――少年に起こった事件
物語の舞台と背景
紙芝居
暁夫の行動を考える
「一日」――戦地のある日
死ととなり合わせの経験
語り手の心のゆれ
理不尽な運命を前にして
もやもやしたものをそのままに
終 章 語り手 それは私たちが作りだす
語り手とは誰なのか――『吾輩は猫である』から
「経験する私」としての猫
「語る私」としての猫
作者と語り手は同一人物か
自伝的小説の「私」とは
語り手は読み手の想像のなかに
引用・参考文献
あとがき
索 引