はじめに
第1章 叙述の順番と論理のシステム
順番に現れる論理
日本とアメリカの作文構造――起承転結とエッセイ
日本とアメリカの歴史叙述――前進する勢いと遡って探る原因
日米大学生の比較研究
二つの基本構造
第2章 順番のマジック――四コマ漫画の作文実験
1 日米の子どもたちは同じ絵をどう説明するか
四コマ漫画の作文実験
自由課題――ものを述べる順番に違いはあるか
条件課題――原因は何か
補完のパターン――コメントと感想
感情的な方向づけ
2 日本人児童の作文の特徴
時系列構造と語りの特性
日本人児童の作るお話
時系列で原因を述べる工夫
時系列の説明スタイルの特徴
3 アメリカ人児童の作文の特徴
多様性はどこからくるのか
アメリカ人児童の視点
因果律の説明スタイルの特徴
第3章 いかに書くか――作文指導と創造力
1 日本とアメリカの小学校
2 アメリカの作文教育
書く技術の向上
アメリカの作文評価基準
アメリカで「創造力」とは?
アメリカの作文教育が目指すもの
3 アメリカの作文指導――創造性開発の訓練
異なる様式(ジャンル)の習得
エッセイはどう書くか
クリエイティブ・ライティングはどう書くか
いかに評価するか
アメリカの個性と創造力――様式の選択と組み合わせ
個性と創造力の処遇――賞賛と叱責
4 日本の作文指導
生き生きとした気持ちの表現
感動する心の育て方――感想文はどう書くか
共感と激励――批判と採点の回避
日本の個性と創造力――ジャンルを超える感情表現
個性と創造力の処遇――心情的な支援
5 作文実験の謎解き
第4章 二つの日米逆転現象
1 自由と規範のパラドックス――個性と創造力のあり方
2 作文教育の歴史の逆転――書くことを通じて求められる能力
3 見たまま、感じたままを素直に綴る――日本の「学校作文」の誕生と変遷
大正期の〈子ども〉の発見
明治期――「発見」以前の型式・模倣主義
大正期――綴り方の創造
昭和期――生活綴り方と国民学校の綴り方
戦後の作文教育
〈子ども〉は解放されたか――学校作文の歴史的パラドックス
4 アメリカ作文教育の源流と革新
アメリカ作文教育のルーツ
二〇世紀作文教育の基礎
アメリカの中産階級精神と科学信奉
心理学と作文評価の数値化
クリエイティブ・ライティングの全盛期
作文教育の空白期と総合言語運動
高等教育の大衆化とエッセイの誕生
変わらぬ伝統とアメリカの革新
5 日米作文教育の歴史と変化
第5章 いかに語るか――歴史教育と分析力・共感力
1 過去はどう語られるか
「いかに」「どれくらいの量」問うのか
2 日本の歴史授業――どのように? と問う意味
時系列連鎖の語り
長い連鎖で語る意味
状況と過程
長い連鎖と心構えに見る過去と未来
3 アメリカの歴史授業――なぜ? と問う意味
逆向きの因果律構造
情報の選択
もし……だったら?――選択と切り捨ての技術
アメリカの結果重視と短い因果
4 いかに評価するか――良い説明と求められる能力
日本の評価方法と共感能力
共感教育のルーツ
「わかりやすさ」から「感化教育」への変容
戦後の共感教育の復活
アメリカの評価方法と分析力
分析力と能力の格づけ
いつから「なぜ」と問うようになったのか?
なぜ決断力・分析力が必要か?
5 歴史教育の二つのスタイル
日本とアメリカの歴史の語り
語りのスタイルと理解のスタイル
第6章 正しい行動の二つのパターン――目標と評価をつなぐもの
1 日米通知表比較
学校生活すべての通知表――日本
試験の成績中心の通知表――アメリカ
評価の対象――「見えない学力」と「見える学力」
2 目標と評価の因果関係――価値目標と技術目標
アメリカの技術目標と合理的な行動
日本の価値目標と正しい行動
3 二つの社会が求める能力
日本の「共通の理解」を作る「共感力」
グループ活動の二つの原理――「自発」と「分業」
アメリカの「分析力」
アメリカの「判断基準」――形式的基準と実質的基準
4 能力の応用
二つの学級統制――相互抑制と報奨処罰
行動の動機づけをどう見るか
5 授業の構造と叙述の構造
起承転結の授業――日本
エッセイ構造の授業――アメリカ
第7章 スタイルの衝突
1 スタイルの混合と思わぬ結末
日本の教室の「なぜ?」
アメリカの共同学習
システムとして働くスタイル
2 納得の構造
論理の起源と基本カテゴリー
カテゴリーの連携と納得の構造
「非個人的に」「安定して」そして「伝達可能に」考えること
3 納得のスタイルと時間の把握
後ろ向き時間と「近い未来」の歴史
資源として時間を使う能力
前向き時間と「過去の再現としての未来」
共同体の時間の構築
第8章 ポストモダニズムを超えて
スタイルの「違い」と能力「格差」
主流文化のスタイルとは
文化資本としてのスタイル
スタイル間の「スイッチ」は可能か
文化相対主義を超えて
参考文献
おわりに
岩波現代文庫版へのあとがき――日本とアメリカの三〇年