北海道へ到達したバードは、函館を起点に道内を巡行した。当地の自然を楽しみ、アイヌの人々と親しく接して、その文化をつぶさに観察する。帰京後、バードは一転、西に向かい、京都、伊勢神宮、大津などをめぐって日本の伝統文化とも触れ合った。
発展途上の北海道と、歴史に彩られた関西……そこで目にしたものに時には賛嘆を、時には批判を向けつつ、縦横に綴った名紀行。
「すでにはじまった改革を実行すること、それらの改革を安定した軌道に乗せること、新しい改革をきちんと開始させること、日本という土壌に移植できそうな西洋文明の今後の果実を賢明に選ぶこと、そもそも日本には不適なために失敗した実験を思いきって放棄すること、平和外交政策を死守すること、本当の進歩とにせの進歩をうまく区別すること、過去一〇年間に国が実際に得たすべてのものをあくまで保持すること──これらは今後長期にわたり日本で最優秀な人材の気力と知力を酷使するに充分である。この帝国がなしたとてつもない進歩はわたしたちの賞賛を求めて当然であり、国事を主導した人々の性格や彼らが一〇年間の体験で得た知恵と謹厳さから判断すると、わたしたちはすでにはじめられた改革の強化に期待をしてかまわないだろうし、今後行われる改革が全階級にとって益となるべく、また唯一永続的な成功に導きうる誠意と堅実さをもって真摯に行われると期待して当然であろう。」(「日本の現況より」)