精神分析家ラカンは人間をどのように捉えたのか。フロイトの「無意識」「事後性」など諸概念の可能性を掬い上げ、アリストテレスの原因論を足掛かりとして、新たに練り上げられる独創的な概念。
〈他者〉=シニフィアンの導入はいかに「主体」を原因づけるのか。またそこに構造的に内在する「欠如」はどのように「主体」に責任を引き受けるよう迫るのか。
原因と因果性をめぐる思考の果てに到達する、象徴界に穿たれた現実界への開口部とは?
[本書の内容]
序 章 精神分析家ラカンの軌跡
■第I部 アリストテレスにおける「原因」
はじめに――アリストテレスを読むラカン
第一章 四つの原因
1 『自然学』第二巻の一般的性格
2 四原因の分解
3 形相因・作用因・目的因の概念的統一性
4 四原因の統一に向けて
第二章 アウトマトンとテュケー
ラカン的前置き
1 一般的概念としての「偶然」
2 アウトマトンとテュケーの区別
3 アリストテレス的目的論のほうへ
第三章 質料と偶然
1 アリストテレスの思考の内的二元性
2 偶然の場としての質料
3 ロゴス化されぬ質料、原因概念の還元不能なるもの
■第II部 ラカンにおける原因と対象
はじめに
第一章 シニフィアン因果性の三平面
1 シニフィアン因果性の第一平面
2 第二平面――非連続なる因果性
3 第三平面――原因の非決定
第二章 ラカンにおけるテュケー
1 アウトマトン/テュケーのラカンによる再定式化
2 反復の二様相
3 現実界とトラウマ
4 子供が火に焼かれる夢
第三章 原因としての真理、対象の機能
1 真理と原因の結合、〈他者〉のなかの欠如
2 主体の関わりと対象aの機能
3 質料因としての真理
4 原因対象の道具性
注
引用・参照文献
あとがき