詩を書き、小説を書き、評伝を書き――77歳で筆を擱いた後、
2023年4月8日に87歳で死去した作家、富岡多恵子の評伝。
池田満寿夫との7年間の事実婚の後、
54年をともに暮らした夫、現代美術家・菅木志雄へのインタビューを中心に、
親族や友人、作家、編集者など、親交の深かった関係者へ取材。
全世界を向うに回し、ひとり荒野を歩き続けた“知の巨人”の生涯を描く。
【富岡多惠子】
1935年大阪市生まれ。詩人の小野十三郎の影響を受けて詩を書き始め、58年詩集『返礼』でH氏賞を受賞。その後、小説を手掛け、73年『冥途の家族』で女流文学賞、97年『ひべるにあ島紀行』で野間文芸賞。鋭い批評眼と文学性を持った評論も評価が高く、94年「中勘助の恋」で読売文学賞、2001年「釋迢空ノート」で毎日出版文化賞、05年「西鶴の感情」で伊藤整文学賞、大佛次郎賞。92年刊行の上野千鶴子、小倉千加子との共著『男流文学論』はフェミニズム批評の先駆けとして大きな話題となった。