久しぶりに実家に帰ると、穏健だった親が急に政治に目覚め、YouTubeで右傾的番組の視聴者になり、保守系論壇誌の定期購読者になっていた。こんな事例があなたの隣りで起きているかもしれない。中にはネット上でのヘイトが昂じて逮捕・裁判の事例が頻発している。そのほとんどが50歳以上の「シニア右翼」なのである。若者を導くべきシニア像は今は昔だ。これは決して一過性の社会現象ではなく、戦前・戦後史が生みだした「鬼っ子」と呼ぶべきものであることが、歴史に通暁した著者の手により明らかにされる。
そして、導火線に一気に火を付けたのは、ネット動画という一撃である。シニア層はネットへの接触歴がこれまで未熟だったことから、リテラシーがきわめて低く、デマや陰謀論に騙されやすい。そんな実態を近年のネット技術史から読み解く。 かつて右翼と「同じ釜の飯を食っていた」鬼才の著者だからこそ、内側から見た右翼の実像をまじえながら論じる。
■本書の目次■
プロローグ右傾の主役
第一章 右傾の内側息を吐くように差別をするシニアたち
コラム1 宗教保守とは何か
第二章 右翼とは何か、ネット右翼とは何か
コラム2 ネット右翼の総人口を見積もる
第三章 右傾の門戸ネットの波に遅れて乗ってきた人々
コラム3 保守と右翼
第四章 未完の戦後民主主義
コラム4 異形の「親米保守」
終章 老人と子供
エピローグこの国に「真の民主主義」は可能か