これまでに浅水波の模型としてのKdV方程式やその厳密解であるソリトンの数理を解説した書籍は数多くあるが,本書はカマッサ‐ホルム方程式やその厳密解であるピーコンやコンパクトンの数理構造を本格的に解説した初めての書籍である。KdV方程式をはじめ,一連のソリトン方程式に帰属する非線形波動の伝播の数学的理論を,特に方程式の初期値問題を中心にこれらの解の構成と構造を詳述し,伝播の幾何学的全体像を明らかにする。線形の場合に限らず,非線形においても有効な多種多様な解法が紹介されている。これらの議論の基礎として,微積分,関数空間の入門的事項だけでもかなり有効である。加えてルベーグ積分論の他に位相に関する初等的概念や多様体などの入門的事項が用いられるが,高度の専門的な知識を多用することなく,議論の展開を比較的広範囲にわたって可能にしている。議論の対象とされた方程式(系)は,物理学,工学において実用的価値があるばかりでなく,数学として改変された一連の抽象的非線形方程式の解法理論のプロトタイプをなしている。本書をこの方面の古典的または標準的理論として,さらに進んだ一般的議論やその関連諸方面への議論の可能性を示唆している。