第一次世界大戦に参加したアルザス地方の兵士は、夜空を眺めるうちに「大少年座」を発見するが、その光景にひどくぞっとしてしまい、だれにも話せずにいる。盲目のアンヤに恋をした青年は、彼女のアパートの部屋じゅうあちこちに罵詈雑言が書きつけられていることに気づいてしまう。ショイヒ家にある日、むかし自分が育った家を見たいという男性が、レンタルスーツの下にスタンガンをひそませて訪ねてくる。ある女性は、太陽の昇らない極夜のノルウェー、クバレイ島を旅する、謎の生物ORとともに。
――人生に突如として降りかかってくるまったく予期せぬ出来事、日常生活にみられる秘密めいた深淵。奈落へと通じる隠し扉のような仕掛けから垣間見える、人を惑わす鬼火や二重底に満ちたそこで、読者は、人間の共同生活の不条理とグロテスクさ、死者の亡霊、思わず舌打ちしたくなるような言葉たちに出会うことになる。現代文学の鬼才クレメンス・J・ゼッツの、過激な語りで細部に至るまで刺激的な最新短篇集。
【目次】
南ラツァレットフェルト通り
むかしの家
クバレイ島
痛みも分かちあえば
二つの死
エレベーターの鏡に映るいくつもの顔
そのネコはラランドの天空に住む
迷惑メール
先に進む
クラス写真
オコジョオコジョオコジョ
マジシャン
エルペノール
トリークラーさん
湖は俺たちより地球が丸いことをよく知っている
クリストキント
おんな
生者たち
スージー
若いころ
訳者あとがき