《ヴァンパイア学》が、ここに始まる。
近代ヴァンパイア文学史——東欧の民間伝承にあらわれる怪物から、ルスヴン卿、ドラキュラ伯爵など文学史上の記念碑的キャラクターまで。
ヴァンパイアをめぐる各地のテクストを批判的にひもとき、ゲーテ、ホフマンらの物語にもふれながら、イメージの歴史的変遷を最新の視座にもとづき詳述する。
現代カルチャーに広く根付いたヴァンパイア表象はどこから来たのか。本質に迫る必読の文学研究。
[本文より抜粋]テクストや文字は、それ自体がヴァンパイア的特性を持つ。なぜなら、それらは、忘れられたテクストが後世の発見により蘇る(=死後の蘇り)という意味で、半永久的に残るだけでなく、他のテクストや現実などを参照し養分にするからだ〔…〕。その意味で、作家や詩人は――あるいは他者の言うことを喜々として引用する我々も――ヴァンパイアに等しい〔…〕。
【目次】
前書き
第1章「ヴァンパイア」ができるまで
1.ヴァンパイアの「当たり前」を見直す 定義と名称について考える
2.「ヴァンパイア」の語源にまつわる問題
3.〈ヴァンパイア紀元〉としてのセルビア二大事件
第2章 様々な「封じこめ」 vampir の“後進”性と〈よそ者〉性
1.一八世紀の議論と、オッセンフェルダーの詩「ヴァンパイア」
2.「封じこめ」られるか、逃れるか 佐藤亜紀『吸血鬼』に見られる構図
3.「バーバリアン・エラー」 ヴァンパイア文学に見られる説明行為
補論 ヴィルヘルムとジェラルダインはvampirか
第3章 文学上の革命 ルスヴン卿の誕生と、ヴァンパイアのキャラクター化
1.ルスヴンはいかにしてなったか
2.『黒人ヴァンパイア』 搾取者/寄生者としてのヴァンパイアの確立
3.「ヴァンピリスムス」が加えた捻り ホフマンの挑戦と失敗
第4章〈吐き気〉と仮死による「封じこめ」
1.〈吐き気〉の契機としてのvampir/ヴァンパイア
2.仮死に上塗りされるvampir/ヴァンパイア
第5章 男性と女性の支配権争いと〈オリエンタリズム〉
1.女性のヴァンパイアたちの排除
2.〈東洋(オリエント)〉化されるヴァンパイア 「ヴルラのヴァンパイア」と『ドラキュラ』
3.侵略恐怖が投影された国、アメリカ
終章
後書き
註
参考文献
図版出典
人名・作品名索引