―医療通訳者は、日本語が母国語でない患者等に対して、日本語での医療・保健を安全かつ安心して提供するために、通訳技能と医学知識を用いて相互理解を支援する専門職である(厚労省HP)―。ブラジル人医師であり、20年以上「医療通訳」を務める筆者が自らの経験を踏まえて、医療通訳者を目指す方への参考書として執筆。外国人患者とその家族の気持ちを理解でき、現場の状況も把握でき、医療従事者の気持ちも理解できる者として、様々なケースをそれぞれの観点から書くことを心がけた。医療通訳の仕事はまだ日本では浸透しているとは言えないが、母語以外の言語を話せる事は、その言語でコミュニケーションができ、文書を読み、情報にアクセスでき世界を広げてくれる。「言葉の通訳」は重要だが、もっと大事なのは「心の声の通訳」なのかもしれない。外国語を理解できない患者にとって、患者と医療従事者とをつなぐ大切な仕事が「医療通訳者」なのである。