人工関節置換術の件数は年々増加しており,臨床と研究の両方においてその進歩はめざましい.本誌では,股・膝・肩・肘・指関節といった各種置換術の臨床成績を掲載.さらに,三次元計画やコンピュータ・ロボット支援技術,patient‐specific instrument(PSI),ステム抜去法など臨床をサポートする情報が盛りだくさん.また,人工関節置換術への応用が今後期待される最先端の研究紹介も充実している.臨床にすぐ役立てられ,現在の人工関節置換術のトレンド,今後の動向がわかる一冊.
【序】
わが国では高齢者人口の増加により,人工関節置換術の件数は年々増加しています.さらにインプラントの改良や手術手技の向上,新しい手術支援技術の導入による術後成績の向上も人工関節置換術の件数増加に寄与しています.件数が多い人工関節置換術は膝関節と股関節でありますが,近年では肩関節におけるリバース型人工肩関節置換術や足関節における人工距骨置換術など新しい人工関節置換術も登場しています.さらには,人工肘関節置換術や人工指・趾関節置換術も行われています.
術前計画・術中支援では,コンピュータ技術が応用され,術前計画では術後機能を考慮した三次元計画が行われます.手術支援技術としてはコンピュータナビゲーション,patient-specific instrument(PSI),ロボットなどが導入されています.また,新しい技術としてaugmented reality(AR)やvirtual reality(VR)を用いた手術支援も開発・使用されています.
手術手技においては,低侵襲手術が一般的であり,術後の早期機能回復をめざしたリハビリテーションプログラムが適応されます.さらに,現在の人工関節置換術においては術後のスポーツ活動も許容した‘forgotten joint’が目標とされています.
人工関節研究においては,臨床成績の調査とともにバイオメカニクス研究,感染の遺伝子診断,ウェアラブルデバイスを用いた患者活動性評価など新しい手法が開発されています.
本誌は,このようにめざましい進歩を遂げる人工関節置換術がテーマです.人工関節置換術に関する最新の知見について多くの論文を投稿していただきましたので,本誌が人工関節置換術の診療・研究の一助となれば幸いです.
2023年4月
横浜市立大学
稲葉 裕