オーエンにとっての密かな楽しみは、公園の兵士相手に、だれにも話せない胸の内を語ること。兵士といっても生身の人間ではなく、第一次世界大戦の戦死者を悼んで庭園に設置された石の兵士だ。学校の行き帰り、石の兵士の隣に腰かけては、学校での出来事や将来の夢、悩みなどを打ち明けるオーエン。いわば石の兵士はオーエンの唯一の心の拠り所だった。そしてまた、石の兵士に、シリアで戦死した父を重ね見ていたのだ。
ところが、庭園の改修計画が持ち上がり、古い石の兵士は撤去されることになり……。
教室で発言することや友だちと積極的に関わることが苦手なオーエンが、石の兵士を守りたい一心で、勇気を出して立ち向かった。
困難を乗り越える勇気、苦手なことに向き合う姿が心に響く感動作。
チルドレンズ・ブック賞、ブルーピーター・ブック賞、最終候補作の翻訳版。