京都大学(京大)は、日本の最高学府と称される東京大学と並ぶ高度な教育機関である。政財界に多くの優秀な人材を輩出し、トップマネジメントとして活躍する人材が後を絶たないことを考えればもっともである。
親は子の将来を心配し京大をはじめとする難関大学への進学を勧め、子はその期待に応えるために懸命に勉強する。京大に入れば、幸せな人生になると考えるのは至極当然のことであろう。
本書の著者である川瀬みどりは、京大合格はおろか、その後は同大学院の修士・博士課程へと進み、博士号も取得した。臨床心理士・公認心理士の資格も持ち、現在はカウンセラーや大学教員として活躍する。一見、うらやましいい人生を歩んでいるように見える。
しかし、本人は在学中「私が私である限り、私は幸せになれない」と家族に言い続けた。自分が自分以外の人間になるくらいのことが起きない限り、その先、生きていく中で幸せになれるなれることはないという絶望感がいつもあったという。それまでの彼女の人生には様々な出来事があり、常に漠然とした不安を抱えながら成長していったのであろう。
ところが、その後の人生において国内外で彼女に多くの影響を与える人々と出会う。これまで人に対して関心を持つことがなかった彼女は、徐々に「人っていいかも」と考えるようになっていった。
そして心理学を学び、自らの過去の体験と照らして、幸せは「人とのつながり、関係性の中で生まれる」と考えるようになったのである。
京大に合格したら幸せになれるのか?という問いに対する答えは、人それぞれにある。ただ、彼女の中では「幸せは人とのつながりの中にある」が答えだ。
本書は、常に「幸せ」について自分に問うてきた彼女の人生と、京大に進んでから学んだ多くのことの中から、真の「幸せ」の定義を考えさせられる1冊である。