*近年、中高生の英語力を伸ばしている東京都。その背景には一体何があるのか。*
外国語の習得には「聞く」「読む」「話す」「書く」の四技能が欠かせない。日本の英語教育は文法や読解に力点が置かれ、「話す力」を伸ばす側面が極端に弱かった。近年、授業の改善は進んだが、入試で「話す力」が問われず、学校での学習と入試の内容が一致しない歪な状況があり、英語教育の抜本的改革の障壁にもなっていた。
「話す」評価が入試で行われずに来たのは、適切な方法が見つからずそれができなかったからにすぎない。現在は、ICTや既存の蓄積されたノウハウの活用などの工夫により、それが可能となっている。英語は実技の側面が強い。暗記や読解は苦手でも、聞いたり話したりするコミュニケーションは得意な生徒もいる。そのような生徒を適切に評価しないのは不作為による過誤とさえ言えるのではないか。
東京都は、国や道府県に先駆けて「スピーキング・テスト(=ESAT-J)」を導入している。今やらなければ、日本の英語教育はさらに10年遅れてしまうとの危機感を共有した多くの関係者が、長期に亘り真摯に検討し実現したスピーキング・テスト。導入を機に東京都の中高生の英語力はグングン伸びているが、その背景には何があるのか? そもそも外国語の習得とはどういうことなのか? ESAT-J実現のカギを握った東京都教育監がその実情を明らかにする。