「ぼくは、その……
きみはキスされたほうがいいと思ったんだ」
家政婦のマロンは土砂降りの雨のなかを一人で歩いていた。
雇い主から暴力を振るわれそうになり、逃げだしてきたのだ。
震えるマロンの前に、一台の高級車がとまった。
親切にもマロンを助けてくれたハリスと名乗る会社社長は、
屋敷で住み込みの管理人として働かないかと言ってくれた。
だが働きだしてすぐに、思いがけない事件が起きた。
階段の踊り場でつまずいたマロンはハリスと折り重なって倒れ、
あろうことか唇を重ね合わせてしまったのだ。
マロンはそのとき悟った──彼に惹かれ始めていることを。