代数的サイクルの理論は、19世紀の複素関数論におけるリーマン面上の関数と因子の研究に起源を発し、様々な分野と交錯しながら発展してきた。一方、20世紀半ばにグロタンディークにより創始されたエタールコホモロジーの理論は、ドリーニュによるヴェイユ予想の解決をもたらした。どちらも今日の代数幾何学および数論幾何学において重要な役割を果たしている理論である。本書の目標はこの2つの理論を、代数幾何の初歩を学んだ者を読者に想定しながら解説することである。特にエタールコホモロジーに関する種々の基本定理を用いて代数的サイクルに関する魅力ある定理を導くことに重点を置いた。エタールコホモロジーの理論は応用されたときにその本来の重要性が現れる。これを読者に感じてもらうのが著者の意図でもある。章末の多くに演習問題があり、独習者への配慮がなされている。