私たちは人間として生きることに慣れている。だから、次のような人がいても違和感はないだろう。恋に熱中する人、子の面倒を見る父母、困っている人を助ける人、音楽やアートを味わう人、ジャンクフードを楽しむ人、避妊する人、などなど。
しかしこれらはどれも、地球を調査してすべての生物の様子を把握した異星人の目には、ほかの動物と比べて大変奇妙に見えるようだ。曰く、配偶のときオス・メスともに選り好みすぎだし、一喜一憂しすぎ。オスが子育てに関与しすぎ。非血縁個体にも親切すぎ。音楽やアート、テレビや井戸端会議など、生存・繁殖に直接役立たない活動に時間を割きすぎ。不摂生や避妊で生存・繁殖をなぜか自ら阻害する、などなど。
言われてみればたしかにおかしな気がするこれらの指摘から、一つ疑問が浮かぶ。なぜヒトは、こんな生き物なのか?
この問いには、進化心理学と文化進化理論(ミーム学)という二つの学問領域が答えてくれる。進化の論理で眺めれば、性差、配偶行動と子育て、利他性の形成過程、さらにヒト特有の「文化」のありようとその変遷を理解できる。心と文化が進化して、私たちはこうなったのだ。本書はその核心を遊び心たっぷりの筆致で伝える、進化心理学とミーム学の決定版的入門書である。
巻末に、「「空白の石板」説支持者に議論で勝つ方法」「反ミーム学論者に議論で勝つ方法」の二篇を付録として収録。