第一部 ツェリン・オーセル 詩十九篇(劉燕子訳)
末路!
一枚の紙でも一片の刃になる
祖国という言葉はほんとうに怖い
ここは隠語、暗号、ひそひそ話があふれかえっているところ
故郷【ホームランド】の火焔
おかしな言葉
いきなりポタラ宮が四方八方から強烈なビームで照らされた
チベット暦の土鼠年の痕跡
こんな詩なんて役に立たないけれど、ロサン・ツェパクに捧げたくて……
二〇〇五~二〇一一年――ただ炎だけが風に揺れて……
チベットの秘密――獄中のテンジン・デレク・リンポチェ、バンリー・リンポチェ、ロプサン・テンジンに献げる
疫病の年に――随想
「どこでチベットの天日塩が買えますか?」
段階――夢遊で自殺を企てる人に献げる
甦る――劉暁波へ
雪国の白
チベット断想(抄)
第二部 劉燕子 詩二九篇
チベットの秘密
握りしめ合う大雪
藍【あお】い雪は陽炎のように立っている――「六四」追悼
四季
香港六・四紀念館の閉鎖を想い
銅鑼湾書店の一匹の鼠
鄒幸?と香港市民に捧げる
消失了連儂墻【消えたレノン・ウォール】
ぼくらはまだ失踪してないぜ――香港詩人へ
何日君再来【フゥリィヂュンツァイライ】――鄧麗君【テラサ・テン】へ
羊の罪
香港人へ
四角なす伏せ字への讃歌
ヴィクトリアパークの灯光
詩人の逝った日――二〇一七年七月一三日
沈黙の力――劉霞へ
亡命する母語
自由
林昭【リンジャオ】に捧げる
鐵鏈八孩母【ティエンパァハイニュ】
A4の白い紙
自白書
失眠
荘子の胡蝶、ナボコフの胡蝶
蜜入り林檎
ぼくたちの失敗――森田童子を聞くソネット
何でもない日
手垢の染みた夕暮れ
返歌考
第三部 唇で踊る闇のハルモニア――解説に代えて
ツェリン・オーセル+劉燕子
出逢い
「チャイナ・モダニズム詩の延安」で
「詩人は神の申し子」として
アイデンティティの再形成
「六四」天安門事件を契機に
文学賞の受賞から発禁へ
「過関」を拒否して
独【ひと】りの詩人・私人として――「著述は亡命・祈祷・証人」
覚え書き(劉燕子)