始まりはゴミ捨場に打ち捨てられていた一体のマネキンからだった。生涯をかけてモノを蒐めた人間の、人生を凝縮した私設博物館。都築響一氏の『珍日本超老伝』(ちくま文庫)でも紹介された坂館長。混沌は一滴の雫から始まり、整然とした大河の流れとなる。超人・坂館長と対峙した渾身のドキュメント。
北海道人なら誰もが知っているというお菓子に「坂ビスケット」がある。それを製作しているのが坂栄養食品工業(札幌市西区)だ。そして、同じ敷地内に不思議な博物館がある。交通量の多い大通り。見上げるとガラス窓には下着や水着を身に着けたマネキンがずらりと並んで見える。一般人はそうした雰囲気から、それはいかがわしいところではないかと思っている。レトロスペース坂会館は秘宝館とは違う。運営するのは坂一敬館長。入り口には、裸体絵があり、お色気ポスターもあり、そして裸像もある。それは「混沌」だけではなく、たしかにどこかいかがわしさを感じさせる。ゆえに当館内に入るには勇気が必要なのだ。モノを集めるという行為には限りなく大きなエネルギーが必要である。強い意志も大切になる。その持続がなければ多くのものは集まらない。哲学的蒐集家・坂館長の頭の内部を徹底的に覗き見る。