本書(ETHICAL SENSE AND LITERARY SIGNIFICANCE, Routledge, 2024)は、倫理学、神経認知科学、進化論、そして文学理論を統合することで、人類に特徴的な「強い社会性」を想像としての言説がどう扱ってきたか、そしてそのように扱うことによって文化史・文学史がどう形成されてきたかを考察している。多くの点で、信じがたい進化史の産物ともいえる人類の強い社会性は、複雑かつ偶発的で、これがあるために、「我々にとって重要であるように感じられるもの」と「倫理感覚が否応なしに重要であると認めよと働きかけているように見えるもの」とが、相互に密接に結びつきながらもそれと同時に解決不能な矛盾として、残されることになる。本書は、文学を「単なる何か別のものの表象」に還元することなく、「文学」と「文化史」を結びつけようとしている。本書の主張は、非自己中心的な意味づけと自己中心的な意味づけの間に生じる感情的な「相違」が、(言語芸術が――しばしば不安をかきたてる社会を批判するような形で――扱う)「生物文化的に進化した強い社会性の根幹」にある、というものである。きわめて豊かな想像としての言説は、形成過程における初期の社会であれ、近年の社会であれ、倫理感覚と文学作品の意味とが、入り組んだ内的な結びつきを明るみに出しながら、調和を取ることもなく、それでいて、融合してしまっているのである。