ハイデガー存在論の開明

　目　次
第一章 序――アナクシマンドロス　ヘラクレイトス　パルメニデス
はじめに
　　1.哲学の始め　2.アナクシマンドロスの箴言
　　第一節 なぜギリシャか？――ハイデガーの存在論の中心課題
　　1.哲学的エートス　2.基本姿勢„ἐὸν“の統括下に住み、„ἐὸν“が語るのを聞く　3.パルメニデスの箴言　4.存在論の立ち位置　5.ギリシャ哲学の偉大な始まり
　　第二節 なぜ存在論か
　　1.最も底なしのもの　2.«最涯の極»　3.前存在論的存在理解　4.哲学すること　5.〈心機に思う〉（meinen）
　　第三節 ハイデガーの基調
　　第四節 ロゴスの自己展開
　　1.「存在は„φύσις“である　2.ロゴスの自己展開　3.詩人の立ち位置
　　第五節 存在論の問い
　　1.存在と無　2.存在者が存在する（„ἐὸν ἔμμεναι“）　3.存在者が元初的に存在するとは如何なる意味か　4.自然が存在する
　　第六節 哲学する
　　1.„φιλόσοφος“　2.人間　3.存在はどのようにあるのか
第二章 『時間と存在』
　　はじめに
　　第一節 存在は時間によって規定される
　　　第一項　時　間
　　　1.どの物にもその時間がある　　2.約定　3.存在追求
　　　第二項　現存の在り様での存在
　　第二節 時間と存在
　　　第一項　現存様式
　　　第二項　神性
　　　1.«フライブルク講義»から　2.«ヒューマニズム書簡»から　3.『ヘルダーリンの詩の解明』から
　　　第三項　„Chaos“
　　　第四項　„prägen“
　　　第五項　穏処の遊戯
　　　第六項　神の遊戯
　　　第七項　われわれとは誰か
　　　第八項　中立化変様（die Neutralitätsmodifikation）フッサール
　　第三節 〈時‐空〉
　　　第一項　„das Inzwischen“
　　　第二項　〈時‐空〉
　　第四節 出来
　　　第一項　それ
　　　第二項　人間の在り様 Menschsein
　　第五節 存在律（Satz vom Sein）
　　　第一項　存在論的第一法則
　　　第二項　超越論的強制力
　　　　1.„κῦρος“（„das Ereignete“）　2.Seinlassen　3.〈出来が出来する。
第三章 『アナクシマンドロスの箴言』
　　はじめに
　　第一節 アナクシマンドロスの箴言（一）
　　　第一項　アナクシマンドロスの箴言　
　　　第二項　パルメニデスの箴言
　　　第三項　存在論
　　　第四項　アルケー
　　　第五項　有限性
　　　第六項　虚天
　　　第七項　アペイロン（ἄπειρον）
　　　1.限界外し　2.欠如性
　　　第八項　ロゴスの自己展開
　　　第九項　現存すること
　　　第一〇項　τὸ χρεών（強制する必須）
　　第二節 アナクシマンドロスの箴言（二）
　　　第一項　時間の発生
　　　第二項　«時‐空»は„φύσις“のうちに蔽い隠されている
　　　第三項　個の発生
　　　第四項　めいめい自分の間で存在する
第四章 『アリストテレスの„Φύσις“ B.1　フュシスの本質と概念とについて』
　　第一節 フュシス
　　第二節 存在性
　　　第一項　„φύσις“の存在証明
　　　第二項　エパゴゲー（ἐπαγωγή）
　　　　1.„φύσις“　2.〈神の本性〉
　　　第三項　ウーシア（οὐσία）［Seiendheit］
　　　第四項　プラトン・イデア
　　　第五項　アリストテレス・エイドス
　　　第六項　ロゴス（λόγος）
　　　第七項　フュシスから存在するもの（φύσει ὄντα）
　　　第八項　φύσιςは自己自身内循環運動である
　　第三節 ヘラクレイトス断片一二三
　　第四節 西欧の思惟の始め
第五章 『ヘーゲルの経験の概念』
　　1.„Bewußtsein“　2.〈経験〉
　　第一節 弁証法„διαλέγεσθαι“（Sichversammeln, ξυνόν）
　　　第一項　〈意識〉そのもの
　　　第二項　„φύσις“
　　　第三項　„δια“
　　　第四項　„φιλεῖν“
　　　第五項　穏処の頡頏　„die Stille“
　　　第六項　一つ組になっている（Zusammengehören）・一重に集束している（zusammen）
　　　第七項　存在への問いの三段階
　　　第八項　イエスの復活
　　第二節 ヘーゲルの経験の概念
　　　1.〈経験〉　2.„πάθος“　
　　第三節 〈キリストである〉„ἐγὼ εἰμί“
　　　第一項　〈意識している〉
　　　　1.Bewußtsein　2.„Bewußt-sein“　3.„blühend-sein“
　　　第二項　〈キリストである〉（ὁ χριστός ἐστιν）
　　　　1.„ὅτι ἐγώ εἰμι“　2.〈意識〉
　　　第三項　キリストの意志
　　　第四項　〈キリストの受難行〉
　　第四節 絶対精神
　　　第一項　成し遂げられた
　　　　1.絶対精神のゴルゴタ（die Schädelstätte des absoluten Geistes）　2.「成し遂げられた」
　　　第二項　精神の現象学と論理学
　　　第三項　まとめ――ゴルゴタ――〈偶然に歴史的に発生〉
　　　　1.絶対精神　2.キリストの経験（受難）
第六章 『何が思惟を仕向けるか』 （ՙWas heisst Denken ?՚）
　　第一節 „heißen“
　　　第一項　講義一　問いの意図（夏学期講義　一九五二年）
　　　第二項　講義二　〈思惟〉という語
　　　第三項　講義三　„Gedanc“, „Dank“
　　　第四項　講義四　人間の在り様
　　　第五項　講義五　発生史的西欧の本質
　　第二節 „τὸ λέγειν τε νοεῖν τε“
　　　第一項　講義六　パルメニデスの箴言
　　　第二項　講義七　„Es brauchet“, „Es“, „χρή“
　　　第三項　講義八　λεγειν, νοειν
　　　第四項　講義九　„λέγειν“と„νοεῖν“
　　　第五項　講義一〇　das Participium
　　　第六項　講義一一　„ἐόν ἔμμεναι“
　　第三節 何が存在論をあらしめるか
　　　第一項　„Gedanc“
　　　第二項　神の試み（Prüfen）
　　　　1.自然的意識„meinen“　2.„überdichten“　3.„ἡγέομαι“
　　　第三項　„ἦθος ἀνθρώπῳ δαίμων“
　　第四節 ものいふ語りがものいふ
第七章 『哲学への寄与』
　　第一節 〈時‐空〉（der Zeit-Raum）
　　　第一項〈時‐空〉
　　　　1.〈時‐空〉はどこにあるのか　2.〈時‐空〉から«時間と空間»が生じる
　　　第二項　ギリシャ悲劇
　　　第三項　時間と空間
　　第二節 無‐底
　　　第一項　無‐底
　　　第二項　無底は時間と空間とにどの様に関わり行くのであろうか
　　　第三項　出来の空間はどのように設定されるのか
　　第三節 時間と空間とへの分離
　　　第一項　瞬間の場
　　　第二項〈時‐空〉から«空間と時間»へ
　　　第三項　個はどのように生じるのか
　　第四節 人間とは誰か
　　　第一項　人間が存在する
　　　第二項　人間は自身のうちにある„φύσις“の指令に応答する
第八章 『言葉への道中』
　　第一節 ゲオルグ・トラクルの講演
　　　第一項　«言葉»
　　　第二項　«冬の夕べ»（‘Ein Winterabend’）
　　　　1.第一詩節は何を呼ぶのか　2.第二詩節は何を仕向けるのか　3.第三詩節は何を仕向けるのか
　　第二節 シュテファン・ゲオルゲの詩‘das Wort’（«語»）
　　　第一項　«語»（‘das Wort’）
　　　　1.自由に処理可能（„verfügbar“）　2.存在の基　3.詩人の転調
　　　第二項　詩人の国
　　　　1.詩人の在り様　2.詩人の国　3.詩人の位置づけ
　　第三節 ノヴァリスの詩«独白»
　　　第一項　言葉への道
　　　第二項　言葉の在り様
　　　第三項　〈ものいふ語り〉
第九章 『ヘルダーリンの詩の解明』
　　はじめに
　　第一節 ヘルダーリンの自然観
　　　第一項　春三月
　　　第二項　„φύσις“の在り様
　　　第三項　彼岸性（Über）
　　第二節 詩«回想»（ՙAndenken՚）
　　　第一項　〈回想〉
　　　　1.詩人論　2.〈一層高位の 理性本体の現有性〉（höhere Vernunftwirklichkeit）　3.イエス・キリスト　4.〈絶対精神のゴルゴタ〉　5.〈二重否定〉
　　　第二項　詩«回想»
　　第三節 賛歌«あたかも祭りの日のように»（ՙWie wenn am Feiertage…՚
　　　第一項　〈祭り〉
　　　第二項　〈三月〉
　　第四節 詩人
　　　第一項　人間
　　　　1.〈人間は詩人的にこの地上に住む〉　2.„meinen“, „erfahren“, „ποιεῖν“, „πιστεύειν“　3.カント　4.　„zusammengehören“　5.始め・高い初期の箴言
　　　第二項　聖なるもの
　　第五節 存在を樹立する
　　　第一項　存留しているもの
　　　第二項　隠れた調べ〈しかし〉（aber）
　　第六節 „ἔστι γὰρ εἶναι“
第一〇章　『芸術作品の根源』
　　第一節 『芸術作品の根源』
　　　第一項　芸術作品
　　　第二項　天才
　　　第三項　真理の自己実現
　　　　1.芸術論の根本原則　2.真理が作品の中に自らを据える　
　　第二節 なぜという理由なしに　
　　　第一項　超越論とは　
　　　第二項　存在者が存在する（ἐὸν ἔμμεναι）――アンゲルス・シレジウス――
　　　第三項〈ある〉の在り様
　　　第四項　„φύσις“の位置
　　　第五項　絶対的に原初的な前存在（Vorsein）
　　第三節 存在者の存在根拠
　　　第一項　存在者の存在根拠
　　　第二項　„φύσις“
　　第四節 哲学的に証しを宣べ伝える
　　　第一項　畏怖の業力
　　　第二項　記号論理学（die Logistik）の論理計算
　　　　1.〈始め 〉の論究試論　2.λόγος　3.„ohn warum“　4.„zuvor schon alles überdichtet hat.“（前以って既に一切を向こう岸で詩作してしまっている）
　　　第三項　畏怖の業力は„ὑπόθεσις“である
　　　　1.なぜ畏怖の業力は許されるのか　2.犠牲の自由・神への畏敬
　　第五節 真理の樹立
　　　第一項　詩人の位置
　　　第二項　われわれの位置
　　　第三項　„im Ist wohnt“
　　　第四項　存在論のその後は？
　　　第五項　箴言は存在が元初的に語ることである
　　　第六項　ハイデガーには期待がある
第一一章　終論　存在の黙契の‐先愛（„Vor-liebe des Seins“）
　　1.哲学　2.思惟論の骨格　3.〈人間は詩人的にこの地上に住む〉　4.詩人は存在を樹立する　5.信仰――〈任せられた待つこと〉（„gelassenes Warten“）　6.„Vor-liebe des Seins“（存在の黙契の‐先愛）　7.ハイデガーの決断　„Sein zum Ende“（終わりに向かっている）――詩人は諦めを学んだ
　　さいごに
　　参考文献