はじめに
近代的仏教理解の問題点/チベットの伝統と日本の伝統/世界で関心を集めているチベットの伝統/仏教のわかりにくさとその理由/教えの言葉は「月をさす指」
一章 インドにおける仏教の誕生と展開
1 仏教誕生の背景
2 釈尊がさとりに至るまで
3 最初の教え――四つの真理(四聖諦)と実践法としての八正道
4 さまざまな弟子への教え
六群比丘/キサー・ゴータミー/チューラパンタカ(周利槃特)/アリッタ/パスーラ/カッチャーヤナ(迦旃延)
5 インドにおける仏教の展開――南伝と北伝、ナーガールジュナ(龍樹)の仏教理解
阿含経典の編纂、部派の誕生、大乗経典の出現/『中論』の難解さ/『中論』を読み解く/ナーガールジュナ出現の「予言」の言葉(『楞伽経』)
6 伝統仏教の理解と実践の方法
理解の方法――聞・思・修/実践法――戒・定・慧/修行の階梯――五道と十地
7 インド・チベットの教え
チベットの『般若心経』/ナーガールジュナ『宝行王正論』/アティシャ『菩提道燈論』/シャーンティデーヴァ『入菩薩行論』と心の訓練(ロジョン)/『チベットの死者の書』
二章 空海と密教
1 空海(七七四~八三五)の生涯と教え
2 密教と顕教
3 密教の系譜
4 十住心――伝統仏教の全体像
第一住心~第三住心/第四住心~第七住心
第八住心・第九住心/第十住心
5 菩薩の願い
三章 道元と坐禅
1 道元(一二〇〇~一二五三)の生涯と教え
2 坐禅とその系譜
3 道元の仏教観を大きく変えた二人との出会い
料理係の老僧(老典座)/天童如浄
4 『弁道話』――中国で学び得たことの紹介
5 言葉と言葉を超えるもの
舟と岸のたとえ(「現成公案」巻)/さとってみるまでわからないのが仏教(「唯仏与仏」巻) 教外別伝と言葉による教えの関係(『弁道話』・「仏教」巻)「道得」(「道得」巻・「葛藤」巻)/「嗣法」とは(「嗣書」巻)/「心不可得」(「心不可得」巻)
6 晩年の十二巻本『正法眼蔵』
第一 出家功徳/第二 受戒/第三 袈裟功徳/第四 発菩提心/第五 供養諸仏/第六 帰依仏法僧/第七 深信因果/第八 三時業/第九 四馬/第十 四禅比丘/第十一 一百八法明門/第十二 八大人覚/
十二巻本に込めた道元の思い
四章 親鸞と浄土信仰
1 親鸞(一一七三~一二六三)の生涯と教え
2 近代化と『歎異抄』ブーム
3 「他力本願ではダメ」はダメ?――伝統仏教における浄土の位置づけ
往生のむつかしさ――源信の場合/往生のむつかしさ――親鸞の場合
4 他力の信のむつかしさ
5 どのようにして他力の信が得られるか――「悪人」であることの自覚
6 『教行信証』の構造――真実(智慧)と方便
7 ナーガールジュナ(龍樹)の仏教理解と親鸞
8 妙好人―阿弥陀仏の救いを実感した人たち
因幡の源左/讃岐の庄松/現在も現われる妙好人――鈴木章子『癌告知のあとで』
おわりに