「私たちはカーストのしがらみから自由だ」
多様な人が集う「放浪部族」が担う大衆芸能タマーシャー時代の流行を柔軟に取り入れ、つねに新たな要素を付け加えていくタマスギール(タマーシャーの担い手たち)の文化、生活を描き出す民族誌
血のにじむような努力を重ねた人が、獲得した知識やスキルを、目の前の相手に惜しみなく与える姿には心を打たれた。またタマスギールの多くが、物乞いに対してお金を渡していたことも印象深い。社会の周縁におかれながらも、他者を気遣う姿は、本書の冒頭でふれた、タマーシャーの調査なんてできるわけがない、恐ろしい世界だという周囲からの声とは異なったものであった。タマスギールの世界に飛び込んでみると、そこには弱い存在だからこそ、手を取り合って助け合う人々の生活世界が広がっていた。(「おわりにそして舞台はつづく」より)
●著者紹介
飯田玲子(いいだ れいこ)
1982 年生まれ。
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了。博士(地域研究)。現在、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科特定助教。専攻は文化人類学、南アジア研究。
おもな論文,著作に『大学生・社会人のためのイスラーム講座』(分担執筆,ナカニシヤ出版,2018年)『インド文化事典』(分担執筆,丸善出版, 2018年) 「民俗芸能から都市文化へ インドにおける都市文化マハーラーシュトラ州のタマーシャー劇を事例として」(『マハーラーシュトラ』12, 93?122, 2015年)他。