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ハイデガーとナチズム

ハイデガーとナチズム

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商品説明
ハイデガーはナチズムのうちに何を見たのか。

そしていつナチズムから離反したと言えるのか。『黒いノート』を含むハイデガーの思索を辿ることで、ナチズムとの対決の本質は、ニーチェ形而上学の克服であったことを証明する渾身の一冊。

 

「ハイデガーとナチズム」問題は、ハイデガーのテキストを読むことなしには論じえない。そして逆も真である。この問題を避けて通るとすれば、あるいはスキャンダルやエピソードとして扱うとすれば、そうしたハイデガー解釈はハイデガー哲学の核心に触れることはないだろう。「ハイデガーとナチズム」問題は、ハイデガーのテキストへ導くとともに、テキストの読みの試金石ともなるのである。(「序」より)

 

 

●著者紹介
細川亮一(ほそかわ・りょういち)
1947年東京都に生まれる。1970年東京大学文学部卒業。1975年東京大学博士課程修了。1984―1986年フンボルト奨学生としてドイツ留学。1995-1996年アメリカ合衆国留学。文学博士(東京大学)。
現在 九州大学名誉教授
著書:『意味・真理・場所』(創文社,1992年),『ハイデガー哲学の射程』(創文社,2000年),『ハイデガー入門』(ちくま新書,2001年),『形而上学者ウィトゲンシュタイン』(筑摩書房,2002年),『ヘーゲル現象学の理念』(創文社,2002年),『アインシュタイン物理学と形而上学』(創文社,2004年),『純化の思想家ルソー』(九州大学出版会,2007年),『道化師ツァラトストラの黙示録』(九州大学出版会,2010年),『要請としてのカント倫理学』(九州大学出版会,2012年)
訳書:『真理の本質について』(ハイデガー全集第34巻)(創文社,1995年)
編著:『幸福の薬を飲みますか』(ナカニシヤ出版,1996年)
目次
 序


序章 『ドイツ大学の自己主張』

 第一節 創造者の三位一体とドイツ民族の負託

  一 創造者の三位一体

  二 ドイツ民族の負託
     ――別の始元への移行――

  三 指導者自身が指導される者である

  四 精神的世界のみが民族にその偉大さを保証する

  五 闘争とポレモス

  六 クラウゼヴィッツとドイツ運動

 第二節 始元‐終末‐別の始元

  一 神は死んだ

  二 最後のドイツの哲学者、フリードリッヒ・ニーチェ

  三 ギリシア哲学の勃興としての始元

 四 始元の偉大さを再び取り返すという遥かなる指令

  五 知の反抗と無力

  六 アイスキュロスと試作・思惟

 第三節 意志としての自己主張
 
  一 自己主張は自分自身を意志する

  二 学への意志としての自己主張

  三 すべての偉大なものは嵐のなかに立つ

  四 我々は我々自身を意志する

  五 自己批判としての『形而上学の克服』
     ――意志の形而上学――

  六 創造者の三位一体
     ――「ハイデガーとナチズム」の解釈視点―


第一章 創造者の三位一体

 第四節 創造者の三位一体の展開

  一 夢を見ている子ども

  二 秘められた精神的なドイツの見えざる前線に留まる

 三 哲学は直接には役に立たないが、しかし主宰的な知である

  四 詩人‐思惟者‐国家創造者
     ――一九三四/三五年冬学期講義――

 五 ヘルダーリン―ニーチェ―ヒトラー

  六 詩人‐思惟者‐政治家
     ――『形而上学入門』――

  七 真理が生起するあり方
      ――『芸術作品の根源』――

 八 試作‐思惟‐行為‐犠牲
     ――『哲学への寄与』――

  九 詩人・建設者・思惟者・政治家の創造
     ――一九三七/三八年冬学期講義――

  十 創造者の三位一体の放棄

 第五節 創造者の三位一体のモデル

  一 ギリシアの始元とドイツ運動

  二 ホメロスによる詩作‐哲学の覚醒‐国家形成

  三 三つの偉大な力がともに働いた

  四 テクネー(アレーテウエイン)としての作品の創造

  五 哲人王の理念

  六 詩人と思惟者の民族

 第六節 『存在と時間』からナチズムへ

  一 『存在と時間』からナチズムへの直接的な道?

  二 歴史性と民族と決意性

  三 私の死から神の死へ

  四 ドイツ民族
     ――我々とは誰か――

  五 学的哲学の理念から「姉妹」テーゼへ

  六 始元の反復
 
  七 創造者の三位一体への最初の一歩

  八 困窮
     ――ナチズムへの最初の一歩――

  九 暗さからの開放者
     ――ナチズムへの思想的関与――

  十 メタ‐政治としての形而上学


第二章 形而上学

 第七節「存在論‐神学」としての形而上学の二重性

  一 形而上学の定義と第一哲学

  二 人間の有限性と主導的問いの二つの根本方向の一性

  三 哲学は普遍的な存在論である

  四 「範例的存在者=現存在」による「哲学=存在論」の理念

  五 「存在者的基礎=現存在」による「哲学=存在論」の理念

  六 存在論からメタ存在論への転化

  七 主導的問いの接合構造における転回

  八 メタ存在論
     ――全体としての存在者を主題とする――

  九 存在者としての存在者への問い
     ――プロス・ヘン――

  十 全体としての存在者への問い
     ――自然、人間、神――

 第八節 存在の意味への問いと『存在と時間』の挫折

  一 Woraufhinとしての意味

  二 存在論‐現象学‐解釈学

  三 存在者の意味と存在の意味

  四 挫折の現場とその自覚
  ――無限進行と自己企投――

  五 機械的な反復と超越論的な問い
     ――杣道――
 
  六 主導的問いの形而上学とその克服

  七 『存在と時間』の根本欠陥
     ――あまりに先に敢えて進みすぎた――

 八 超越態的差異と地平の克服

  九 『存在と時間』から『時間と存在』への転回

  十 形而上学の言葉と『存在と時間』の根本経験

 第九節 形而上学の展開

  一 超越としての世界内存在

  二 基礎的存在論‐メタ存在論

  三 超越の形而上学

  四 形而上学による最後の誤解を投げ捨てる瞬間

  五 自由の形而上学

  六 自由から創造へ
     ――人間の本質への解放――

  七 創造の形而上学

  八 形而上学の克服
     ――主導的問いの形而上学と意志の形而上学――

 九 形而上学の歴史
     ――その始元と開始――

 十 挫折する哲学


第三章 神の死

 第十節 まったく新たな始まり

  一 時代の哲学

  二 深い退屈
     ――困窮のなさという困窮――

  三 哲学は郷愁である

  四 世界‐有限性‐孤独

 五 偉大な者たちの最後の者
     ――フリードリッヒ・ニーチェ――

  六 神は死んだという根本経験に襲われた 

  七 神への問いと形而上学の構想

  八 芸術(詩作)は哲学の姉妹である

  九 ヘルダーリンの語が運命となった

 第十一節 ヘルダーリン

  一 将来を指し示し神を待ち望む詩人

  二 ドイツ人の詩人

  三 祖国ゲルマニア

  四 形而上学的場所から形而上学の克服へ

  五 神の死と終末=移行

  六 ギリシア人とドイツ人の固有なもの
     ――ディオニュソス的なものとアポロ的なもの――

  七 詩作‐思惟‐国家創造から思惟‐詩作へ

  八 思惟者は存在を言う、詩人は聖なるものを名指す

 第十二節 ニーチェ

  一 ナチズムとの対決はニーチェ形而上学との対決である

  二 ニヒリズムへの反対運動

  三 神の死のニヒリズム

  四 「存在=価値」のニヒリズム
     ――意志の形而上学――

  五 蛇の頭を噛み切る牧人から聖なる影のうちに住む牧人へ

  六 偉大な西洋の思惟者の最後の者
     ――別の始元への移行――

  七 西洋の最後の形而上学者
     ――近代の完成の開始への移行――

  八 主導的問いの形而上学のうちに閉じ込める

  九 プラトニズムの逆転

  十 ナチズムはニーチェ形而上学の政治的な現象形態である


第四章 ハイデガーが見出した「ナチズムの偉大さ」

 第十三節 ナチズム革命

  一 革命は始まってさえいない

  二 ナチズム革命の本質は創造者の三位一体のうちにある

  三 革命は我々ドイツの現存在の完全な変革をもたらす

  四 総統のみがドイツの現実であり、その法則である

  五 政治的意志と力と知

  六 詩人と思惟者は重労働者ほど食物を必要としない

  七 国家は芸術作品ではない
     ――労働国家――

  八 別の形而上学
     ――真理と労働――

  九 ナチズム革命の否定

 第十四節 この運動の内的真理と偉大さ

  一 「内的真理と偉大さ」と「惑星的に規定された技術と近代的人間との出会い」

  二 民族の歴史的偉大さ

  三 形而上学的民族

  四 始元を別の始元へ変容させる

  五 歴史の場としてのポリス

  六 ポリスと政治的なものの切り離し

  七 ナチズムの歴史的唯一性

  八 近代への問い

 第十五節 惑星的に規定された技術と近代的人間との出会い

  一 一九三八年
     ――ナチズムからの離反――
  
  二 機械的経済と超人

  三 技術を形而上学的に超克する

  四 ユンガーと力への意志の形而上学

  五 ナチズムはその方向へ向かいました

  六 別の始元への移行の可能性

  七 近代の完成が開始する

  八 「形而上学的に」(つまり存在史的に)思惟する
     ――ナチズムの存在史的な偉大さ――

  結 自己批判
     ――ナチズムとの本質的な対決――

      *

  註

  あとがき
  
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