ヒトは悠久の歩みの中で、その在り方を少しずつ変化させて、多様な姿として社会関係を築いてきました。とくに私たち人間は、「ケアし・ケアされる、育み・育まれる」存在として、その営みは霊長類の中でも特質すべき複雑かつ多様な姿として、試行錯誤を重ねながら文化や制度を形成してきました。
ヒトは、一人では生きることができない存在です。いま私たちは強さを誇る近代的な「自立する」人間像から、弱さを含みこむ「ケアする/される」人間像へと、そのイメージを大きく変貌させ始めています。しかし、そこには人間特有の複雑で微妙な関係性が織り込まれ、とくに社会的にはケアの相互関係性の難しさや奥深さが横たわっています。本書では、その深遠さの一端にまで届くように、学際的な探求を試みています。(「はじめに」より)