『簠簋内伝金烏玉兎集』は安倍晴明撰に仮託され、中世から近世にかけて広く流通した暦書であるが、従来その成立背景は不明のままであった。本書は多彩な史料と詳細なテキスト分析をもとに、天台顕密仏教圏で仏教・牛頭天王信仰と暦が結びつき、『簠簋』が成立したこと、それと共に、その狙いが各地で普及し始めた中世仮名暦を通した、仏教教化の拡大にあったことを指摘。また、これに対抗して「摺暦座(すりごよみざ)」を立ち上げ、京暦(のちの大経師暦(だいきょうじれき))を発行した暦道賀茂氏の動向も詳論して、中世における暦をめぐる動態を明らかにした。
さらに古態本の翻刻・書き下し文、古活字版の影印も収録。『簠簋』研究の基本図書にして、決定版である。