なぜ人は塔に魅了されるのか。野間宏『わが塔はそこに立つ』の作品読解を横軸に、源信『往生要集』とダンテ『神曲地獄篇』、『法華経』における塔の叙述、ストゥーパ以来の塔の変遷、日本層塔建築と心柱などを随時縦軸とし、塔の成り立ち、様相に多面的な背景を与え照明をあてる。表象批評のチャレンジングな試み。書き下ろし作品。
【目次】
序
第1章「わが塔はそこに立つ」とは?――小説の構造についての考察
第2章「われ」と地獄――「われ」と「そこ」についての考察
第3章主人公の〝顔〟の謎――「われ」と「鏡」についての考察
第4章真如堂のトポスと鳳凰――「そこ」とその歴史についての考察
第5章「わが塔」の「塔」についての前提的考察――仏塔の由来と変遷
第6章層屋根と心柱のつくり――日本の塔層とはどのようなものか?
第7章空中の宝塔――塔はどのように表象されてきたか?
第8章層塔の境位――『わが塔はそこに立つ』における「塔」を介して
補章 今日からふりかえって
おもな参考文献
あとがき