直木賞作家のノンフィクション
開戦から八五年を迎える年ゆえ、回忌(=弔い)にふさわしいものにしたいとも考えている。むろん、これまでの私自身の体験と見聞を偽りなく映し出すものであり、その中身のある部分については相当な風当たりもあるだろうと覚悟しておく。戦争なるものへの見方は、人それぞれに、あるいは世代間においても異なるはずだが、私としては出来るかぎり中立かつ客観的な視点と立場でもって記していくことを心がけるつもりである。総じて言えば―、あの戦争は一体何だったのか。その本質とは何か?そのことを解明しておかなければ、世代を超えた真の反戦、平和運動には繋つながらない。今なお進行中のウクライナ戦争にしても、その本質は日々の報道からはほとんど見えてこない。これまた何ゆえの、何のための戦争なのかを解き明かしておかねば、どちらをどう支援するのかという問題の答えが見出せない。それは決して遠い国の戦争ではなく、戦時中にあった千島〈列島〉の略奪にも通じる話であることを知ってほしい、との願いもこれを記す動機の一つだ。今昔ふたつの戦争を通して、現代世界が抱えてしまっている由々しき現実、悲しむべき事態を一人でも多くの人に伝えるべく、それぞれの真相に肉迫したいと願っている。(まえがきより)