今から約1600年前の西暦421年に、倭王の讃が建国されたばかりの中国南朝の宋に使いを送った。その後、約60年のあいだに、讃、珍、済、興、武という5名の倭王が宋に遣使朝貢したことが中国史書の『宋書』に記されている。
この「倭の五王」が誰かという論争は長く続いているが、いまだに結論は出ていない。
本書は、従来の倭の五王論に「五王は強い意志をもって隠蔽されたのだ」という視点が抜けていたと提起する。
倭の五王は日本古代史上、名前をよく知られた王たちではあるが、その事績は必ずしも褒められるものばかりではない。宋への遣使朝貢は、倭国が宋の冊封国となったことを意味するのである。
天武天皇は、7世紀末葉の681年に国史編纂の詔を発する。それは7世紀以前の日本の歴史を確定させる正史といってよい。あわせて、天武天皇自身の正統性を国内外に宣言する史書でもあった。
そこに、数世紀前のこととはいえ、先祖である天皇(大王)が宋の皇帝と君臣関係を結び、国が冊封国となっていたことを記すだろうか?
記すはずがないのである。だから、天武天皇が国史編纂にあたって五王の隠蔽を命じたことは間違いないと断言できる。さらに、正史として完成する『日本書紀』には大幅な紀年延長操作も加えられている。
すなわち、「倭の五王」の真実に迫るためには、天武天皇の隠蔽手法と『日本書紀』の紀年延長手法というふたつの手法を探り出すことが必須なのである―――。
本書は、『日本書紀』が仕掛けた日本古代史の壮大なミステリーに大胆にメスを入れる、画期的歴史書である!
発売:ワニブックス 発行:ワニ・プラス