憲法は,国家の目標を定め,国家行為に動因を与える役割を持つが,日本では従来,国家の目標が憲法に規定されているという視点が十分認識されてこなかった。これは,憲法が国家行為を動機づける「目的プログラム」ではなく,むしろ枠づける「条件プログラム」として捉えられてきたためである。しかし,多くの現代立憲国家では,法治国家,社会国家,文化国家,平和国家,環境国家といった具体的な国家目標が憲法に明示され,これらは国家目標規定と呼ばれている。日本国憲法にも25条(福祉国家)や27条(勤労権)にそのような規定が存在するが,解釈論上の位置づけは不明確なままである。本書は,ドイツ憲法学を参照して,国家目標規定の成立過程や機能を明らかにし,国家目的や国家任務との違いを検討する。さらに,生存権や健康権など国家目標から生じた主観的権利の構成と司法的統制を分析し,新たな視座から日本国憲法の再構成を試みる。